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ジプソフィラ
4 ※

* * *



「ちょっ…月代っ…!」


背後には馴染んだベッド、正面には見慣れたとしても心臓に悪い美貌。

組み敷かれた手首を何とか動かそうともがいたが、そんな抵抗も無駄に終わる。

雪羽を押し倒した月代は、口許に意地の悪い笑みを浮かべてブルーグレイを覗き込む。


「…何だ、嫌なのか?」
「嫌って……だって、昨日もシただろ…」


覗き込まれた視線を流しきれず、語尾が小さくなっていく。

一度目を許したなら、二度も三度も同じ。…などと言う滅茶苦茶な理屈を振りかざす月代に、完全に流されてしまっている自分が憎い。
昨日だってテスト期間だというのにも関わらず押し切られ、結局彼を拒みきれずに行為を許してしまったのだ。

…そして、おそらく今日もまた同じ。


「今日でテストも終わったんだろう? 何も気にする事はない」
「昨日もテストなんて気にせずに押し倒したクセに、もっともらしい事言ってんじゃねぇよっ……っ!」


都合の良い言葉を紡ぐ紅梅に悪態をつくも、素肌を滑る指にその声が上擦る。

口先だけの抵抗だと分かりきっているのか、月代は意地悪く唇を歪めて笑った。


「…昨日の今日で…お前だってしっかり感じている癖に」
「煩い、この絶倫っ……んっ」
「誉め言葉として受け取っておこう」


唯一抵抗の意思を示す唇を塞がれる。

軽く触れて、離れて。そんな優しい触れ方に雪羽が弱いという事を知っているのなら、性質が悪い。


「…ぁっ、やっ…」
「そのまま素直に喘いでいろ」


輪郭をなぞる指に堪え切れずに声を漏らせば、月代がまた耳元でクスクスと笑う。

背筋を抜けていくもどかしい快楽に、雪羽は自分から月代の背に腕を回した。

…陥落する、その合図。


「月代…」
「…“愛して”やるよ、雪羽」


堕とす為の、呪文。

耳元で囁かれるその声に、雪羽はピクリと背を揺らした。


「…やっ、あぁ…」
「…何処に触れて欲しい?」
「ぁっ…、言わせるな、ばかっ…」
「教えて貰わないと分からないだろう?」


わざとらしい問いに悪態をついても、疼く躰は抑えきれない。

それでも直接口に出すのは恥ずかしく、象牙の肌を滑って行く指先を捕え、はだけたシャツから覗く胸元へと導いた。

木苺のような細やかな飾りの上へ誘った雪羽に、月代は夜色を細めて訊き返す。


「…此処か?」
「ん…」


羞恥に顔を赤く染めて。それでも快楽を望んで頷いてみせる姿は、何とも淫靡だ。

見惚れる程美しい月代の瞳が、雄の色を纏って雪羽を見下ろす。


「…“おねだり”は、どうやってするんだった?」
「…月代…っ」


愉悦を含ませた男の声に、玻璃を潤ませた雪羽がもどかしげに名を呼んだ。

しかし月代は意地悪く唇を歪めるだけで、導かれた指先を動かそうとはしない。


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あきゅろす。
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