ジプソフィラ 8 ※ 「こわい…こわいよっ…、っあ…!」 譫言のように繰り返す雪羽に、月代はまた触れるだけの口付けを落とす。 躰を支えるように背に回した腕で、その髪を優しく撫でた。 「…大丈夫だから」 「…ぁっ…」 見開かれた玻璃の様なブルーグレイの瞳の端に溜った涙が、白い頬を伝って落ちる。 胎内に埋まった熱い楔が脈動したのを感じて、雪羽はまた小さく声をあげた。 ひくんと震えた躰を抱き寄せ、月代は甘く囁く。 「あんっ…」 「…お前、可愛いな」 「…ぁ、…なに…?」 「そうやって、俺を煽るんだろう?」 「ゃ、…そんな…こと」 …知らない、そんな事分からない。 そもそも此の行為を始めたのは雪羽じゃないのに、彼はどうしてそんな事を言うのか。 どうして彼は、自分を抱くのか。 …どうして、どうして? 回らない頭が、壊れた様にその言葉をループさせる。 「ど…して…?」 「ん…?」 「どうし…て…、おれ…?」 直ぐ側にある夜色。近い距離。 …おかしいでしょう? 一度、遠い場所で視線を絡ませただけ。言葉を交した事も、ないんだ。 朦朧とした呟きの意図は、月代に届いたのか。彼は薄く笑った。 「…欲しいんだよ」 「ぇ…?」 「それ以上の理由はない」 …だから、どうして? そう訊き返そうとした刹那、胎内に埋められていた熱が急に中を穿った。 「あぁっ!?」 「…そろそろ、馴染んだろう?」 其処からは気をそらしかけていた雪羽は、不意打ちの刺激に高い声を上げた。 ビクビクと背をしならせた雪羽に、月代は笑みを深くする。 「あ、あっ…!」 「ん、いいか…?」 「やっ、うごいちゃだめっ…」 意地悪く笑う月代に、ふるふると首を振る。 彼がクスクスと笑う、ただそれだけの行為でも、胎内がその動きを拾い蠢いた。 「んぁっ、やぁ…」 「あぁ、雪羽が感じるのは此処だったな?」 「! あっ、あぁっ…!」 囁きながら突かれた先程の場所。 指先で与えられた刺激とは比べものにならない程、彼の熱に穿たれる快楽は凄まじかった。 「んぁっ、あっ、あんっ!」 自身に直接触れられる感覚とも、指で後腔をえぐられる感覚と違う。もっと熱い、確かなモノで内部を穿たれる感覚はまさに異質。 体感した事も、想像した事もなかった、快楽。 犯され、奪われる事の、狂喜。 ──…呑まれる 「あっ、あっ…や、つきしろっ…!」 「ん、雪羽…」 縋るものを求めて、彼の首に腕を回した。 優しい声が、耳元に降ってくる。 「…イイか…?」 耳元に直接吹き込まれるように囁かれる声。低く甘く、艶めいている。 その声にまた躰が小さく揺れた。…彼を呑み込んだ媚肉が、応えるようにひくつく。 ≪ ≫ [戻る] |