ジプソフィラ
6 ※
「んっ…ふぅ…」
何度も何度も、角度を変えて重なり合う唇。
その柔らかい熱を追おうと必死になっていたから、いつの間にか後腔に挿し入れられた指が二本に増えていた事には気付かなかった。
「う…ぁ…」
「ふっ…」
声を漏らす雪羽に、応えるような小さな笑い声。こつり、額同士が突き合わされ、また至近距離で視線が絡み合った。
くちゅくちゅといやらしい水音が、何処か遠くに聞こえる。…否、本当はとても近いのだけれど。
「…っ、あぁっ!?」
一瞬だけ、月代の指先が霞めた其処。
背筋を駆け抜けた電流のような強い快感に、雪羽は思わず躰をしならせた。
間近で雪羽の反応を覗き込んでいた月代が、にやりと意地悪く笑う。
「此処か」
「ふぁっ! あっ、やぁっ…!」
指先をバラバラに動かす事で、断続的に与えられる激しい刺激。
自身に与えられるのとは違う、けれど強い快楽。理由の分からないそれに、雪羽はただ翻弄される。
「あ、あ…! ヤだ…、月代っ…!」
「大丈夫だ。イイんだろう、雪羽」
それがとても気持ち良くて、呑み込まれるのが怖くて。
叫ぶように相手の名を呼んだが、与えられる刺激は止まない。
「あっ、あっ…、あんっ!」
「…ふっ、随分イイ声で啼くな」
抑えられない、不自然に高い嬌声。それに、月代は満足そうに笑った。
同じ場所ばかりしつこく刺激する指は、いつの間にか三本に増えていた。
素面で考えるなら、痛みを訴えてもおかしくはない筈の其処。けれど、今其処が訴えてくるのは快楽だけだ。
「……怖いか?」
「あっ、やぁっ! …ゃ、もうわかんなっ…」
囁かれた言葉を辛うじて拾った雪羽は、ぱさぱさと濡羽色の髪を乱して首を振った。
乱暴に掻き混ぜる様な動き。…それすらも今の雪羽の躰は、快楽として拾う。
もう、自分がどうしてしまったかなんて、分からない。
「…そうか、ならそろそろいいな」
「ぁっ…?」
呟きと共に、雪羽を乱していた指が引き抜かれる。
急な喪失感に、雪羽は寂しげな声をあげた。
カチャカチャという、耳障りな金属音。それが衣服のたてる音だと気付く頭は、今の雪羽にはなかった。
只ぼんやりと、無意識の熱を宿した瞳で、月代を見つめる。
そんな雪羽の視線に気付いた月代は、愉しげな笑う。
「…ふっ、そんな目で見るな。…それとも、煽っているつもりか?」
「…?」
「流石に、それはないか」
月代の科白に、思考が蕩け切った雪羽は幼い仕草で首を傾げる。
そんな雪羽の額を、月代は優しい指先で撫でた。…滲んだ汗で肌に貼り付いていた前髪を、そっと払う。
「…挿れるぞ」
「え…?」
言われた言葉の意味が分からず、雪羽はきょとんと彼を見上げた。
だが入り口に添えられた熱に、その瞳は更に見開かれる。
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