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アスファルトに咲く花
4

「だから好き嫌いはしてはいつもいけないと言ってるでしょう、明良。レバーもきちんと食べないと」
「あぁ、好き嫌いはアカンね。プルーンとかはどや?」
「…ほうれん草」


真顔のまま冗談を吐いた唯人に続けて、本気だか冗談だか判断し難い利也、完全に便乗で呟いただろう龍治が言う。

全員に好き勝手言われた明良は、ぐったりとしながらも言葉を返す。


「それくらい食べてますよぅ…。ただ、今はちょっと食欲が……」
「美味しいですよ、ショートケーキ」
「あ、それは食べる」


親友の呟いた好物の名前には、ちゃっかりと反応。非常に分かりやすい性格だった。

顔を上げた明良は、少し嬉しそうな表情で唯人を見返す。


「ショートケーキ好きなん、キティ?」
「あぁはい、特に苺が好きです」
「そーか、なら俺が奢ったるわ」
「えっ、いいんですか!?」
「えーよえーよ」


…さっきまで怯えてぐったりとしていたのは何処へやら。瞳を輝かせて利也を見上げる現金な明良に、唯人は肩をすくめた。


「…いつもながら、単純ですねぇ」


まぁ、扱い易いのは彼の美徳なのだが。

苦笑する唯人は降りてきた手に髪をくしゃりと撫でられ、傍らの人を見上げる。


「龍治先輩?」
「唯人は? 何を食べる?」
「俺ですか? そうですね…、今日はコーヒーの気分です」


そう言って微笑む構図は、それなりに和やか。

総長副長と平凡少年二人という不思議な組み合わせに不審げな目を向けていた族の少年たちが、予想外にほのぼのとしたその様子に一様に首を捻っていたが、そんな事は四人とも露程も気に止めなかった。


「和己さーん! ショートケーキと……キティ飲みもの何にする? あと、マンダリンとチョコムース!」
「あ、俺コーヒー飲めないんで、オレンジジュースで」
「…ブレンド二つと……、唯人、デザートはどうする?」
「…では、俺もショートケーキで」
「…お前たち一気にごちゃごちゃと言うな、分かりやすくまとめて来い。……って、あぁ?」


<首無し>のドアを開けて早々、四人にそれぞれ過ぎる注文を口され、マスターである和己は低く言って振り向いた。

いつもたまっている利也と龍治、龍治のお気に入りという唯人。彼が顔を知る三人の他、利也の傍らにいる明良に目を止めて和己はゆるりと瞬いた。

語尾の上がり加減に元ヤンを感じた唯人は、普段落ち着いていてもやっぱりこういう時って素が出るんですね、とぼんやりと思う。


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