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アスファルトに咲く花
3

(…これはまた、凄い人に引き合わされましたね…)


[神龍]と[狂鷹]が元より幼馴染みで仲が良いという話は聞いた事があったが、龍治の側にいるからといって自分がまさかその御本人と対面するとは思っていなかった。

世界が違う。そう思っていた。

けれど、利也はにこにこと笑いながら此方を見ている。


「ま、[狂鷹]なんてのは所詮通り名。唯人クンは“利也”って本名で呼んでや」
「あ…はい」


唯人が曖昧に頷くと、傍らに立った龍治が少し驚いたように呟く。


「…珍しいな」
「リュウのお気にの唯人クンや、そりゃトクベツやろ?」
「……そうか」
「そ。…うん、それに俺は嬉しいんやで。リュウが俺にこの子を見せにきてくれて」
「……」


利也はニタリと笑い、バシバシと龍治の背を叩く。

対する龍治は微妙な表情をし、その手を軽く振り払う。が、本気で邪険にしている訳ではないのは雰囲気で分かった。

唯人はそんな二人を見比べ、軽く目を見張った。龍治が人と仲良くしている所を、見たことがなかったのだ。


「…てか、二人ともいつまでつっ立ってるん? さっさと座りぃ。んで好きなモン頼み、今日は俺が奢ったるわ」
「えっ…」
「奢り? また珍しいな」


戸惑う唯人の隣で龍治が軽く眉を上げた。利也はといえば楽しげに笑っている。


「今日は結構機嫌いいからな〜。リュウが唯人クン連れてきてくれたし、ウチは今晩すき焼きやし、この前俺は俺で面白そうなモン見っけたし、色々イイコトだらけや」


戸惑いながらも木製のベンチに着席した唯人にメニューを押し付けながら、利也は指折りに“イイコト”を数える。

唯人の隣、利也の向かいに座った龍治は、メニューを見下ろす唯人を見つめていたが、ふと引っ掛かったように顔を上げた。


「…面白そうなモン?」
「そ、リュウの唯人クンみたいに、俺も面白そうな“仔猫”見っけたから。…あ、唯人クン、ココはモンブランがおすすめやで」
「あっ、はい…」
「“仔猫”…?」


龍治と話しながらも、利也はメニューを開く唯人に指先であれこれと示す。
唯人はそれに気を取られていたが、頬杖をかいた龍治は彼の話が引っ掛かるらしい。


「うん、臆病な箱入りのキティな。丸っこい猫目が可愛かったから、なんや気に入った」
「……ふぅん」


にこにこと話す利也を暫し見つめ、龍治は素っ気ない声で返した。

冗談めいた口調だが、案外利也は本気のようだと悟った。…それなら、今は別にそれで充分だ。


「あれ、もっと突っ込んで聞いてくれへんの?」
「話したいなら勝手に話せ」
「うわー、冷たい。…そんな冷たいリュウには話したらんわ、…な、唯人クン」
「…はい?」


一連の流れを、メニューに視線を落としていた唯人は耳に入れていなかった。いきなり話を振られても、何がなんだかわからない。


「…何でもないから、気にするな」
「はぁ…」


目を瞬かせる唯人の頭に、龍治は隣からその髪を撫でるように手を乗せる。

共にいるうちに馴染んだその温度に、唯人は釈然としないながらも頷いた。


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あきゅろす。
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