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アスファルトに咲く花
月が綺麗ですね。(11年十五夜)

…ほんの少し、夜風が肌寒い。

昼間はまだ残暑が根強く居残るが、それも陽が沈めばなりを潜める。

ひゅぅと吹いた夜風に、シャツを一枚羽織っただけの出で立ちの唯人は軽くくしゃみをした。


「ん……、流石に少し寒い…ですね」


小さく呟き、自らの両腕を抱えて軽く身震いする。

そろそろ、戻った方がいいだろうか。

そう思った唯人が腰を浮かしかけるとほぼ同時に、肩の上にぱさりと布の落ちる感触がした。


「……外に出るなら、せめて上着くらいは羽織れ」
「龍治。…ありがとうございます」


振り返ると、そこには先程はまだ眠っていた筈の恋人で。

床に散らばした上着を拾ってきてくれたらしい。肩に掛けられたそれに、有り難く袖を通す。


「…何をしていたんだ、こんな夜中に」


こんな夜半に、ベランダで一人膝を抱えて。

先刻二人交わし合った熱の余韻すら夜風に冷ましてしまった唯人は、小さく笑みを浮かべて空を見上げる。


「…月を、見ていました」
「…月?」
「はい。…今夜は、十五夜ですよ」


雲の無い秋の夜空に、煌々と浮かぶは僅かの欠けも無い見事な満月。

薄闇に慣れた瞳には眩しいくらいのその光に、龍治は軽く眼を細める。


「…眩しいな」
「ふふっ、そうですね…」


その光の美しさより、その眩きを先に口にした龍治に、唯人は軽く笑みを零す。

花のように綻ぶその笑みに、照らす月の光に、龍治はまた眩しいように瞳を細めながら彼の横顔を眺める。

混じり気の無い漆黒の瞳に映る月光。

その美しさに龍治が小さく息を吐くと、唯人が不意に口を開く。


「月が、綺麗ですね」


その瞳は望月に注がれたまま。ともすれば、そのまま“月”に向かい投げかけられたと流してしまいそうな、その科白。

けれど唯人を見つめていた龍治は、その言葉が自分に向けられた慕情なのだと気付いていた。

穏やかな唯人の横顔に視線を走らせ、龍治も月を見上げ口を開く。


「…お前と一緒に見ているからな」
「…!」


唯人が少し驚いたような顔をして、此方を振り向いたのが分かる。

…あるいは、唯人は龍治には通じないとでも思ってその愛の言葉を口に出していたのだろうか。

龍治は小さく笑う。


「…月が綺麗だな」
「……はい」


互いに視線を合わせないまま、翳りの無い満月を見上げて。

雅な言葉遊びに興じたまま、どちらともなくその手を重ね合わせた。



“...I love you”












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遅刻十五夜! …正直十五夜何の関係もない気もしますが、とりあえず月ネタという事で…(笑)

「月が綺麗ですね」と、情緒的な事を言ってくれるのは唯人かな、という事で龍唯ですw さり気に事後…ww ←


ネタが良く分からない方は、“夏目漱石”“月が綺麗ですね”でググりましょうww


11/9/13

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あきゅろす。
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