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アスファルトに咲く花
愛しい静寂

恋人は元より寡黙な方であるし(褥の上ならば別だが)、自分もそこまで多弁な方ではない。

そんな自分たちだから、二人でいる時、いつでも会話が弾む訳ではない。話題が続かなければ、互いに黙り込む時も間々ある。

…けれどそういった時間も、決して嫌いではない。

そっと龍治の背に自分の背を預けながら、唯人は小さく息を吐く。


(…この時間が心地好いと、貴方も思っていて下さるでしょうか?)


肩越しに僅かに振り向けば、バイク雑誌を膝上に置き、ページに視線を落としている龍治。

こんな風に、背中合わせに互いの体温を共有しながら、緩やかに時間を過ごす事。…そんな何でもない事に倖せを感じているのは、自分の独りよがりではない筈だ。

彼と同じように膝上に置いた文庫本のページに栞代わりの指を挟み、唯人はこっそりと肩越しに龍治を見つめた。

女の子が羨ましがりそうな長くボリュームのある睫毛が、漆黒に一滴雫を落としたようなチャコールグレイの瞳を縁取っている。部屋に二人きりでいる時の彼は大概裸眼で、唯人はその色彩をじっと眺めるのが好きだった。

薄墨を思わせるその瞳が数秒毎に瞬きを挟む様を、立てた膝を抱え込みながら見つめる。

…どのくらい、そうしていたであろうか。

部屋に響くのは、彼の指先がページを繰る音と、壁に掛けられた時計の秒針が刻む声だけ。

知らず、息を殺すようにして龍治を見つめていた唯人の方を、彼がふと肩越しに振り返る。


(…あ)


ぱちり、と視線がかち合う。

焦がれる程に慕う鉛黒の瞳が真っ直ぐに自分に注がれ、唯人は瞬きもせずじっと彼を見返した。

何も言わず、ただじっと自分を見つめている唯人に、龍治はふっと表情を崩す。

無表情気味な彼が自分にだけ見せる、優しげな柔らかい微笑み。

唯人がすっと息を呑むと、龍治は何も言わないまま、そっと片手を此方へ向かって差し伸べてきた。

毛足の長いカーペットの上を擦る、彼の長い指。

相変わらず龍治は何も言わないが、唯人は微笑みを返してその手に自らの指を絡める。

片手を、緩く絡ませ合って。

再び雑誌に視線を戻した龍治に、唯人はそれは倖せそうに表情を綻ばせた。



愛しい静寂















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部屋に二人っきりでいる龍治と唯人のとある時間。

付き合ってからは、龍唯はお家デートが多いと思いますw でもずっとベッドの上でイチャイチャしてる訳でもないから(←)、こんなゆったりした時間もあったり。

全く台詞がないという、龍唯ならではであろうSSw


11/3/20

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あきゅろす。
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