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46.不審


「・・・孝博、部活は?」

今日も孝博と帰りが一緒になった。

孝博はサッカー部に所属しているため、よほどのことがない限り放課後は部活のはずなのに、ここのところ昇降口で僕を待っていることが多い。

僕は不審を隠せずにとうとう本人に聞いた。

少しくらいの怪我でも練習には参加するやつだ。

孝博はちょっと肩をすくめると、何でもないことのように言った。

「先輩とトラブってな。しばらく自主謹慎中。」

「トラブル?」

練習を見学したことが何度かあるが、実力重視で先輩と後輩の垣根はそこまでがちがちに堅くない印象の、のびのびとした部だったように見えた。

部活を休む事態というのは、よほどのことだ。

それとも・・・

「本当に?」

「ん?」

「・・・いや、・・・」

言葉を濁した僕の顔を、孝博がのぞき込む。

いたたまれなかった。

僕は、孝博の何を疑っているというのだ。

なぜ、こんなにもどす黒い気持ちになるのだろう。

「紀・・・?」

柄にもなく心配そうに、呼ばないでほしい。

孝博の自主謹慎が本当かどうかに関わらず、僕が彼に心配をかけていることに代わりはない。

そうでなければ、週に何度も僕と一緒に帰る必要はないのだから。

要するに僕は、孝博に心配をかけるような状態だということだ。

いつもは申し訳なく、情けなく思うはずなのに、なぜか今は胸の中にもやもやとした暗い気持ちが充満していて苦しい。


なぜ。

なぜ、孝博の気遣いをこんなにも煩わしいと思ってしまうのだろう。




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あきゅろす。
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