45.教室
やはり最近、孝博は僕を気にかけているようだった。
「まじ? それ今度貸してよ」
「いいけど。ぜっったい壊すなよ。」
「おお」
「次俺にも貸して。」
「ああ」
昼休み、何故か孝博がC組の僕の隣で弁当をつついている。
僕の不審な視線を気にもせず一週間。
最初は戸惑っていた赤井たちとも溶け込んで、まるっきり違和感が無い。
先週帰りが一緒になったとき、孝博は僕に聞いた。
「お前、最近滝沢の準備室行った?」
その何気なさを装った質問に僕はあっさり首を横に振ったのだけれど。
内心、痛いところを突かれたと思った。
そう、アルバイトで忙しくしている内に一月も終わるというのに、僕は11月以来社会科準備室どころか先生と立ち話をすることすらなかった。
先生と向かい合うのが怖くて、なるべく話しかけられないようつい避けてしまっていた。
本も借りたままだから、返さなくてはいけないのだけれど。
明確な理由があるわけではない。
けれど、話しかけることもかけられることも耐えがたかった。
一体何を見たのか、そのことに孝博は気付いたらしい。
その翌週、彼は昼休みにC組の教室を訪ねた。
だから要因となったものは推測できるのだけど、何がしたいのかはわからない。
・・・なんでそんなに秘密主義なんだよ。
僕は中井とトレーニング談議に熱中している孝博を見て、釈然としないものを感じていた。
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