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29.勧誘?
それは本当に突然だった。



飛山祭から二週間ほど経ったある日、僕は加納君と教室の扉の前で再会した。

「よ。」

「おはよう。」

聞くと、加納君は僕を訪ねてきたらしい。

あの喫茶店以来顔を合わせることもなかったんだけど。

「館斐さぁ、何かアルバイトとかしてる?」

いきなりの質問に面食らいながらも首を振る。

「放課後って、暇あったりする?」

「・・・部活やってないし、暇って言ったら暇だけど・・・?」

訝しげな僕に、加納君はそうか、と頷いた後、何故か伺うように僕を見てきた。

なんだか言いにくそうに口ごもっている。

「? なに?」

「あのさ、喫茶店でバイトしてみねぇ?」

「えっ?・・・なんで?」

「あーと・・・今、親父がバイト探してるんだけどさ。飛山祭の時のお前のこと聞いて、どうかって。」

「・・・・・・」

「あ、いきなりだし、すぐに答え出さなくていい。年明けくらいに今のバイトがやめちまうから、その代わりなんだよ。週3で、給料はそんな高くねぇけど、時間的な融通は結構効くから。まぁ、ちょっと考えといてくれ。」

突然のことに返事できないでいると、加納君は慌てたように言い募る。

気圧されるように頷くのと予鈴が鳴るのが同時で、「よろしく」と片手を上げて去っていく。

いきなりの話しすぎて頭がついていかないんだけど、どうやらアルバイトのお誘いらしい。

雇われて働いたことのない全くの素人の僕がそんな風に勧誘されるなんて「なんで?」としか思えないんだけど・・・。

そういえば加納君のお父さんって、飛山祭のA組の出し物で茶葉や豆を提供したんだっけ・・・と考えたところで本鈴が鳴ってしまい、僕は慌てて自分の席に向かう。


席についてから考えようとしたんだけれど、始まった授業は苦手な数学で、とりあえずその話は保留、ということにした。



その日の放課後、何故か教室まで迎えに来た孝博に引っ張られて共に帰宅する道中で、加納君の喫茶店の常連の一人が滝沢先生だと聞かされて、色んな意味で絶句する羽目になったんだけど・・・

ていうか孝博、何でそんなに情報通なの・・・って思うのも、いまさらか。
はあ。




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あきゅろす。
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