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彼女からの、愛の告白@ 〜サスケ先生の憂鬱〜(相互記念リクエスト)
「オレ、サクラちゃんから、愛の告白を受けたこと、あるってばよ」
その日、ナルトの唐突過ぎる発言に、サスケは絶句した。
「…まあでも、色々あって。結局オレが振ったことになっていたんだっけか?…今思えば、もったいなかったってばよ〜」
宙を見ながら、何かを思い出すように言葉を紡ぎ、へへへ…と笑う次期火影。
サスケは無表情を保っているものの、結局一言も言葉を発する事なく。
……ややおぼつかない足取りで、火影室を後にした。
『 彼女からの、愛の告白@ 〜サスケ先生の憂鬱〜 』
(あのウスラトンカチめ……、デタラメを抜かしやがって…!)
下忍指導にあたる上忍、サスケ先生は、本日かなり斜めの角度で、機嫌が傾いていた。
今朝、火影室での任務言い渡しの際に、ウスラトンカチによる「+α」がついた。
その「+α」というおまけは、往々にして不要な情報であり、かつかなりの攻撃力殺傷力を持っていたのだった。
その証拠に、あれから数時間経つ今も、相変わらず眉間にしわが寄る。
―――――彼の担当する、木の葉隠れの下忍ッ子たちは、そのおかげで朝からたじたじだった。
「サクラ先生と喧嘩でもしたかなぁ?」
「ありえるわ。サスケ先生、気難しいもの」
「でも、いつもは仲良さそうじゃんよ」
ひそひそと会話をしながら、先を進む上官の後を追う。
サクラは木の葉病院の顔とも言える、期待の有能な医療忍者であり、老若男女問わず人気も高い。
しかもサスケは、あのうちは一族のたった一人の血筋ということもあって、里内では有名な二人である。
傍から見れば花を背負うほどの、美男美女カップルであることは間違いない。
「あのぉ、サスケ先生…?」
「やめとけよ……」
恐るおそる、後ろから話しかけようとする者に対して、別の少年が牽制する。
少女がサスケの隣にそっと近づいて、背の高いその表情を伺った。
「ありえねえ……」
(――――なんかぶつぶついってるぅ!?)
慌てて振り返り、残りの二人の下忍に目配せと「タダイマ、キケン」信号を送る。
おとなしくしておこう…。
三人の意見は一致した。
****
任務は、国内の大名のもとへ密書を届け、返事を貰ってくること。
今朝、集合場所である南大門で待っていたところ、火影塔より任務内容を心得たサスケが到着した。
――――その顔が、限りなく不機嫌であることに、三人は竦みあがる。
本日の任務内容を、抑揚のない低い声色で、事務的に淡々と説明すると…。
「あのアホの次期火影の責任にして、この密書を捨ててやろうか……」
変わらぬ声色で憎々しげに吐き捨てる上官に、
(サスケせんせ〜っ!!?)
下忍達は心の中で、叫んだ。
その日は終始ずっと機嫌の悪い上司を抱えていた。
大名との面会の折には、やはりはらはらしたが、とばっちりを受けることがなかったのは救いである。
国内ということもあり、奇襲を受けることなく、無事、夕刻までには里に戻る事が出来た。
****
夕日が差し込む火影室では、不在であるシズネに代って、サクラが綱手の補佐を務めていた。
当然、次期火影であるナルトも、朝と同じく似合わぬ事務処理をこなしている。
綱手に報告をし、渡した密書が確認される間、下忍達はナルトとサクラの仲睦まじい様子をちらちらと観察していた。
ナルトは高い所の本を取ってやったり、重い巻物をどかしてやったりと、良く気がつき、甲斐甲斐しくサクラの助けをする。
「オレの補佐も、サクラちゃんにしてほしいってばよ」
「え〜、いやよ。サボりそうだもん」
調子に乗るナルトに、笑顔のサクラが軽くあしらう。
「サクラちゃんでなきゃって、ご指名しよっかなぁ〜」
なおもヘラヘラと笑いながら書類をめくる。
「アンタが私を?……高いわよぉ?」
くるくると巻きものを巻いて整理しながら、サクラが笑い返す。
――――――ピキ…っ。
誰かの何かがキレたような、不吉な音に、下忍達は首を竦めた。
「――――結構、ご苦労だった」
綱手の声に、安堵してほうっと息をつく。
問題の、気難しさ全開の彼は、無言で踵を返した。
そのままスタスタと、じゃれ合う二人に近づくと、ナルトに紅い瞳で睨みつける。
「――――なっ、何だってばよ。サスケェ…」
写輪眼を向けられて、たった今までの笑顔を引きつらせて、ナルトが冷や汗を掻く。
サクラはきょとん、とした顔を向け、下忍達は震えあがった。
「テメェ……、いい加減にしろよ」
胸倉を掴んで、地の底を這いずるような声色で凄む。
――――明らかに虫の居所が悪い。
「な…なんの話だってばよ…。そんな眼ぇ、向けンなってばよ!」
苦笑いを浮かべるナルトを強く押しのけて、フン、と鼻をならす。
それ以上、ウスラトンカチには目もくれずに、傍らで「我関せず」状態で佇む彼女に視線を移した。
「……おい、サクラ。……後で話がある」
「――――――へっ?…わたし?」
予期せずに矛先を向けられたサクラが素っ頓狂な声を上げる。
そのころには、もう彼は部屋のドアを開けており、乱暴な音を立てて出て行ってしまった。
残された下忍たちは、茫然と佇んでいた。
珍しくここまで機嫌の悪いサスケ先生に、どうしよう〜、といった情けない顔を浮かべている。
本当に、稀なことだったのだ。
「サクラちゃ〜ん…、何やらかしたんだってばよ……?」
「………さあ?あんたこそ…」
びっくりしたぁ…、と呟きながら、ナルトが意外にものんびりと問いかけた。
それに対してサクラも、全く身に覚えがない、とでもいうように肩を竦めて見せた。
「まあ、あたしは、どうでもいいことだとは思うが……」
3人のやりとりを見ていた綱手が、仕事の手を止めずに切りだした。
「―――ナルト、今朝のおまえの、余計な発言が原因なんじゃないのか?」
一瞬ナルトに視線を向けて、またすぐに机上に戻す。
忙しくてそれ以上は構ってなどいられない、というように。
「――――ああ。あれ?……今朝ふと思い出したついでに、言ってみただけだけだってばよ〜」
頬を掻きながらナルトが思い当たった事を言った。
そして腕を頭の後ろにまわしながら、へへっと笑う。
「サスケばっかりいまだにモテるってのは、やっぱり悔しいかんな〜」
事情を知らないサクラは、眉をひそめる。
下忍たちも、口を揃えて「サスケ先生、今日ずっと不機嫌だったんです…」とうなだれる。
「ねえ…、ナ・ル・ト」
機嫌の良さそうな明るい声で、サクラが仁王立ちで、立ちふさがった。
ナルトは、長年の経験上、危険信号を察知する。
「何を言ってくれたのよ…!」
「ええ、えーとお……。その、…オレの心の引き出しの、大切な思い出っていうかぁ……」
下忍達はこの日、初めて。
木の葉隠れの里伝説の「一撃必殺、しゃーんなろー!!」を目にしたのだった――――。
つづく
********
2012.7.5
相互記念に、ポン酢さまからのリクエスト文、『サスケ帰還後サスサクで、サスケ→サクラ』でした。
付き合ってるか、否か、迷いましたが、結局書きやすいので付き合ってる前提にしてみました。
そして、この文(後半)に絵をつけて下さりました!!素晴らしいです!
※ポン酢さまのみ、お持ち帰りくださいまし(^^♪
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