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short (ss)
光に浮かぶ日 (2012サスケ誕)




意識があるのに、瞼が重い――――。





いつもの事だ。

だんだんとハッキリしてくる聴覚は、窓の外の鳥のさえずりを拾う。

心地よいはずの音程なのだが、今は恨めしい。




―――今日も、朝が来た。





ゆっくりと瞳を開くと、薄明かりが部屋を覆っていた。

手のひらを当てながら、軽く目をこする。






身体全体が鉛のように重く感じられるが、今日もすべきことが山積だ。

片手を頭に当てながら、肘を使って上半身を起こし始める。




いつもの日課で、頭の中で本日のシュミレーションをする。





朝から下忍たち共にDランク任務だ。

それを昼までに片付けたら、報告、その足で作戦会議のためミーティングへ出席。



そして午後からは、そのメンバーでAランク任務へ。

大名の護衛などかったることこの上ないが、忍とは持ちつ持たれつの関係なので何も言えない。





―――――そうだ…、その前に。





今日も、一番最初の仕事がある。

毎日の日課、朝食を用意すること。




朝は、どうしても早起きのできないサクラのために、簡単なものを作ることになっている。

もしそれをいえば「誰のせい……?」と睨まれることが予想できるので、敢えてふれない。



ただ、先に起きる自分が、ごく当たり前にしていることだが。

彼女は、毎日嬉しそうに言う。





「いただきます」





上体を起こし、ひとつ呼吸をしたところで、違和感に気付いた。





「……………」





―――――隣で寝ているはずの彼女が、いない。




不審に思いながら、床に降りて時間を確認する。

まだいつもの時間だ。




何か早朝からの任務でもあったのか…。

不意に、先程の予定の、優先順位が替わった。




もうこのまま着替えて、さっさと出掛けようか。

しかしそれだと、きっと下忍達にまた「先生、早すぎる!」とか文句を言われそうだ。




そこまで考えて、ふっと薄く笑った。








階下に降りて洗面台に向かっていると、物音がしてきた。

そして、台所の方から流れてきたいい匂いが、鼻腔をくすぐる。




思わず、手を止めた。



「……………」



もしかして……。




台所に入ると、目に入ったのは、振り向いたサクラの満面の笑み。




「おっはよー!サスケくん!!」


「……え…、おまえ…」




サスケの反応を待つ前に、手を広げてそのまま向かってきた。




そして。




――――リップ音が耳に響く。





抱きついてきて、頬に口付けをされた。






「誕生日、おめでとう!!」






不覚にも驚き、今しがた唇の離れた頬に、手を当てた。




「だから朝の準備くらい、しようと思って。あ、でもちゃんとしたご飯は夜作るから、楽しみにしててね」


「―――――あー…」




忘れてた。




「忘れてたの…?」


「…まぁ」



完全に忘れてた。




「誕生日忘れるなんて、もったいな〜い」

さあさあ、座って!、と鼻歌交じりに茶碗によそう彼女を、まだ目で追う。




何がもったいないんだか…。




そう思いながらも、自然に口元が緩んだ。


そして、促されるまま椅子に座る……ことはなく。




「……で?」




飲み物を用意する小さな手から、グラスを取り上げながら、尋ねてみる。




「……で?…って?」




対して、理解できない、というようにサクラはきょとん、とした。





心の中で、少しだけ落胆した。

彼女のその反応に、小さく唇を曲げて、僅かに目を逸らす。




「…あれだけってことか?」




数秒してサクラは、ああ、と合点がいったようで。


……照れたように苦笑した。




「――――もうっ……、そんな慌てなくたって…」




能天気に笑うサクラへと、一歩、間合いを詰める。

そして、その声とその先の言葉を、塞いだ。





「……んっ」





ほんの少しの隙間だけ空間を取り、間近で見つめながら真顔を向ける。





「……今、よこせ。……これくらい」


「……もうっ、座って!」




サクラは、今度こそ真っ赤になって、怒ったふりをしていた。

小さく笑うのを隠しながら、言われた通りに席に付く。




テーブルの上には美味そうな朝ごはんが並んでいた。




「よく起きたな」


「だって、サスケくんのためだもん。今朝くらいは…ね。……で、夕飯は何がいい?」


「………夕飯って…」




今現在、今日の夜の食事のことなど、考えられないのだが。




「……何でも」




サクラの顔をじっと正視しながら、無表情で答える。

すると、彼女は何を勘違いしたのか、再びぼっと顔を赤らめた。




「……もうっ!何言ってんのよ!」


「……何も言ってねえけど」




サクラが何を想像したかは、容易に分かる。

喉まで出かかった言葉は呑みこんで、箸に手を伸ばした。




「いただきます、は?」




目の前に座ったサクラが、にこにこと見つめている。

サクラにチラ、と視線を向けてから手を合わせた。





―――今夜も。



「……いただきます」



表情を変えずに口にしてから、口端を上げた。

きっと、彼女は、気付いていなかっただろうけど。






fin.

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2012.7.23


サッケさん、お誕生日おめでとうございます〜〜〜(*^_^*)
きみの存在が、全サスサク好きの毎日日常を明るく照らすのです!!
サスケ大好きだ!


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