short (ss)
理由なんて、ねえよ C 〜おまえだったから〜 (リクエスト)
「サスケくんは、私のこと、好き?」
出た。
これこそが彼女。
直球すぎる質問に、表情は保つも思わず半歩、後ずさる。
後ろはこの待機所の出口。
たまたま此処の前を通りかかり。
たまたま彼女しか居ないのが目に入り、特に用事はないのだがここへ入った矢先のことだ。
悪い気も全くしないし、否定する気もないのだが。
何故こんな問いを投げかけられるのか。
サクラは直球であるのに、鈍感らしい。
前途多難に、自分の表情が強張るのを自覚した。
「………なんで」
「え…、だって。昨日のって、…その…こくはくとか…」
最後の方はあまり聞きとれなかったが、言いたいことは理解出来た。
昨夜は、そのまま別れて帰ったことを思い出す。
もじもじと俯く彼女は次第に赤面していく。
「……違ってた?……ごめんなさい…」
肩が小さく震える。
また、泣くのだろうか。
戦場ではあんなに強がっていたのに。
おかしなやつだ。
女ってのは、どうもハッキリさせたいことがあるらしい。
男である自分からしたら、単なる鈍感とそう変わらない気もするのだが。
自分でも無意識のうちに、口端を上げていた。
正直、何て言ったらいいのか、わからない。
だけど。
「違ってた」わけではない。
別に嫌悪感も、これといってない。
……というか。
目の端に涙を浮かべて顔を上げる彼女が、おずおずとサスケを見据える。
何か言うのを待っている。
こういう表情は、自分だけが知っていればいい。
『…こうでもしなきゃ、分かんねェかよ』
口には出さないが、頭の中で勝手に言葉が紡がれる。
それでも身体は勝手に動いた。
サクラの女らしい細い肩に手を伸ばす。
そして。
「…………っ!!」
ほんの僅かな距離の先のサクラの表情が、可笑しかった。
翡翠の瞳を見開き、たった今触れた紅い唇も半開きになっている。
「さぁ…どうだと思う…?」
そっと掴んだ華奢な肩から、手を離す。
相変わらず自分の無表情を保つすべには、感心を通り越して呆れてくる。
「…じゃあな」
「さ、サスケくん!!」
呼びとめられて振り向いた先の表情は。
記憶の中の少女と同じ顔だった。
優秀で大人びた感じとは正反対の、少し自信なさげな。
オレの良く知る、彼女。
「わたしも…っ」
その先は聞こえなかったけど。
今、またひとつずつ、理解した。
きっと、こうだ。
『わたしも、大好き』
彼女が自分を想うことに、理由はない。
そして自分も、理由なんて、ない。
大切な存在だから。
導き出した答えが正しかった、そう確信して。
彼女に微笑を向けていた。
「……知ってる。…ずっと、前から」
ウザいはずだったお前に、支えられていた。
今度はそのことに感謝して、向き合ったのだ。
「――――今日、終わったら、メシでもいくか?」
沈黙を回避するために発した言葉。
サクラが「…デート!?」と反応する。
(まあ、そういうことにもなるんだろうけど…)
「あ…でも、…今日は…ちょっと」
しかし、何か思いだしたように、サクラが気まずそうな表情になる。
サスケは心のどこかで、予想していたよりも落胆していた。
「………そうか」
「新薬の研究レポート出さなきゃいけなくて…、多分9時過ぎると思うの…」
そして、見る見るしょんぼりと俯く。
そんな彼女の様子にばつが悪くなり、言葉を探す。
「……その時間でも、メシはまだなんだろ」
「…うん、そうだけど。でも待たせちゃうかなって…」
こういう変な所で、サクラは遠慮する。
別に構わないのに。
「ごめんね、せっかく誘ってくれたのに…」
「…いや、別に。いつでも行けるし」
「…ほんと、行きたかったなぁ…。サスケくんと一緒にご飯食べに行くなんて何年ぶりだろ…」
すまなそうな顔を向けるサクラは、本当に残念そうだ。
本当に、いつだっていいことなのに。
そこから、つい何となく視線を外して。
「………適当でよければ、作っておいてやる」
この口から出た台詞に、自分で驚いた。
サクラもぽかんとした表情だ。
「……え」
「…時間ねえから、行く」
自分が理解できず、内心自嘲する。
その場に居づらくなったのを隠すために、部屋を後にする。
約束は、曖昧なままで。
(…何言ってんだか)
その時突然、背後からぐいっと引かれる感覚。
待機所から廊下に出たところで、服の裾を掴まれたのだ。
「サスケくん…っ!それって、お家に行っていいってこと…?」
興奮したようにサクラが声を上げる。
振り向き肩越しに見降ろすと、案の定、興奮気味な表情。
廊下は人の目が多い。
「…………」
ベストを掴まれたその細い手を、やんわりと離しながら。
人差し指を彼女の紅い唇に当てた。
その顔がまた、赤面する。
ひとつ嘆息した。
但し、決して呆れたわけでは、ない。
「…来るのか、来ないのか?」
分かりきった二択を出すと。
――――――彼女は思った通りの言葉をくれた。
「……い、行きます」
少し、上擦った声で。
****
ウザい、と思っていたのは事実だ。
だけど、ウザいほど自分を見てくれ、想ってくれる存在は失くしてはならない。
それが、あの時より少しは大人になった自分の辿りついた答えだ。
肉親の愛、友の愛、里の愛……全て同じ言葉で表現されるが、意味の重さはそれぞれ違う。
そして、もう一つの、たった一つの。
大切な、愛。
そんなことにさえ、やっと気付いた。
これに気付かせてくれたのは、サクラだった。
自分にないものは、与えられればいい。
相手にないものは、与えたらいい。
いつも、いつも。
そうやって、支え合って生きていけばいい。
「ねえ、サスケくん。……どうして私を選んでくれたの…?」
静寂を破った声に、ぴたり、と動きを止める。
馬鹿か、と思った。
だけど馬鹿だったのは、オレも同じだ。
「……理由なんて、ねェよ」
支えてくれていたのが。
感謝したかったのが。
「おまえが、サクラだったからだ」
それが愛だと教えてくれたのが、おまえだったからだ。
今度は泣かない、その瞳に口付けてから。
ゆっくりと、夜の帳が降りる部屋の中で。
幾度も、唇を重ねた―――――――――。
fin.
***************
2012.8.20
拍手&コメントからのリクエストでした。匿名さま、ありがとうございました!!
ここまで読んで下さり、ありがとうございました!!
注 以下はぶちこわしあとがきです
長かったってばよ…!!
実はこのテーマを頂いてからウンウン悩んだのですが…。
悩んだ結果、こんな質にしかなりませんでした(ToT)
さまざまなサイト様でこのテーマを拝読した気がしますが、すばらしい…!!
なので、今更(ほんとうに今更な)わたくしが参戦するのもいかがなものか…!
と怯んでおりましたが、がんばって取り組んでみました…。
ええ、分かっております。惨敗。
結局、「何で好きになったか」が、分かります??
分かりますかね???
くどいほど強調してみた(見苦しいほど…汗)のですが…!!
長かったので本当は、○打お礼文にでも。。。と思っていたのですが、あまりにもな出来あいに普通にお披露目することにいたしました。
いろいろとつじつまの合わない所もござると思いますが、どうか勘弁してくださいまし…!!!
本当にいい勉強をさせていただきました。ありがとうございました(●^o^●)
ゆるは
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