キャンディ#2
▼翻弄
「で、萌に惚れられちまった気の毒な野郎は、どこのどいつなんでィ?」
「壱零Qの・・・」
「もう〜、そんな細かい事まで、どうでもいいでしょ!!」
いくら萌ちゃんが抵抗しても、沖田隊長は「面白ェから教えろィ」と益々興味を増した。
「おい、みんなでトシの部屋で何やってるんだ?」
局長が、部屋を覗き込んで聞いてきた。
「何でもありやせんよ。なァ、萌?」
「う、うん」
「そうか?萌ちゃん、あんまりトシを困らせるようなこと言っちゃダメだぞ。何か一人でブツブツ言ってたぞ」
そう言って、局長は部屋を後にした。
萌ちゃんは、「何か、私が悪いことしたみたいになってる」と言って唇を尖らせた。
それを見て、沖田隊長が「可愛くねェでさァ」と言うもんだから、また二人でギャーギャー始まってしまった。
「私は、こんなところで沖田さんと遊んでいる場合じゃないわ。土方さんの所へ行かなくちゃ」
「行って、何するの?」
「お父さん、なんて言ったことを謝らなくちゃ」
そう言って、萌ちゃんは副長を探すため部屋を後にした。
沖田隊長と二人きり。
何か、イヤだ。
「山崎、分かってんだろ?」
「は?何がです?」
「萌が、本当は誰を好きなのか」
いつになく、真面目な顔をした沖田隊長を見たのは久しぶりだ。
腹の中さえ、黒くなければ本当に素敵な人なのに。
副長だって、マヨラーでなければ本当に男前なのに。
局長だって、ストーカーでなければ。
真選組の頭は、どうして揃いもそろって変な人なんだろうか。
「萌ちゃんの好きな人、ですか?」
「お前、本当に壱零QのQ太郎だと思ってるのかィ?」
「え?」
つーか、Q太郎って誰だよ。
「けど、わざわざ俺に相談しに来たんですよ」
本当に好きな人も何も、萌ちゃんが言うんだから。
「萌は、今でも土方の野郎の事が好きなんでィ」
「えェェェ?!」
「そんなことにも気づかないから、てめェはジミーなんでさァ」
ジミーは、関係ねェし。
あ、でも。
「そう言えば、あの彼より副長の方がステキ度は上、みたいなこと言ってたっけ・・・」
「だろ?」
んー。
だけど、萌ちゃんが彼の事を好きだと言っているんだからいいのに。
っていうか、おとなしく副長が萌ちゃんを受け入れてあげれば万事丸く収まるのに。
何だか、本当に。
真選組は、萌ちゃんに翻弄されている。
結局、みんな巻き込まれている。
何だか、哀れだな。
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