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キャンディ#2
▼彼
「ハァ」と、自分でも驚くほどの溜め息を吐いて屯所の門をくぐる。



「随分、でけェ溜め息だな」



その声に顔を上げると、副長が立っていた。
副長の顔を見たら、萌ちゃんの顔が浮かんだ。
萌ちゃんの顔が浮かんだら、また溜め息が出た。



「テメェ、人の顔見て溜め息たァ、いい度胸だなァ、山崎」



しまったァァァ!!



「いや、あの、そうじゃなくて」

「何が、そうじゃねェんだよ?」

「いや、あの、副長の顔が」

「俺の顔がなんだよ!」  



しまったァァァ!!

もう、ここは素直にシバかれておこうかな。
シバかれておけば、万事丸く収まる。

これで、萌ちゃんが・・・なんて話したら大変だ。



「何なんだよ、てめェ!」

「ギヤァァァァァ!!!」



・・・これで、いいんだ。

いい、のか?

ほら、萌ちゃんに関わるとロクなことが無い。
分かっていたのに。

こんなに巻き込まれてる。

今だって、どうして俺が副長にシバかれなくちゃいけないんだ?
そんな理由は、どこにもない。

ただ、萌ちゃんのことは黙っていようって思っただけだ。

それなのに。

どうして、こんなに振り回されてしまうの?

俺、もしかして・・・萌ちゃんのこと。



「ありえねェェェェェ!!!」



ずぇったいに、ナイ!
断じて、ナイ!!

俺は、頭のヨワイ子は好きじゃない。
確かに、顔はすごーく可愛いけどさ。







一日を終えて、布団を敷きながら今日会った萌ちゃんの片想いの彼と副長を思い浮かべた。

やっぱり、違う。
人種が違うよ。


彼は、そうだなァ、分かりやすく言うと、高天原の狂死郎さんみたいな。
キラキラーンっていう音が、聞こえてくるような人だった。

髪の毛は金髪っていうか、金髪っていう下品な色じゃなくて、寒くないのにマフラーしていて靴が、すごーくとんがっていた。
後で萌ちゃんに、あれは金髪ではなくてベージュ系という事と、マフラーではなくてストールというお洒落アイテムだと教えてもらった。
俺には良く分からないけど、副長が同じ格好をしても似合いそうだけどな。


あれ?
ってコトは、萌ちゃんの「そうかなァ?私は、元々ああいう人が好きですよ」っていうのも納得できなくもないか。

だけど、これからしばらく俺は萌ちゃんと関わらなくてはいけないのかと思うと、また溜め息を吐いた。

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