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キャンディ#2
▼恋する少女
僕らの国が、侍の国と呼ばれていたのは今は昔。



「ステキ・・・」



ここに、恋する少女が一人。

恋する少女の名前は、萌ちゃん。
彼女は、真選組の土方十四郎に片想いをしていて媚薬騒動を起こした伝説の持ち主。

顔も可愛いし、性格も悪くない。
料理は、とびきり上手い。
毎日毎日、屯所にお弁当を持って来て副長に押しつけていた。

なんやかんや言いつつも、副長が残さずに食べていたのは美味しいからだろう。

だけど萌ちゃんは、頭が少々悪い。
そうでなければ、インターネットで媚薬なんて恐ろしくて誰が購入するか。

そうなんだ。

頭が悪い事を除けば、萌ちゃんはパーフェクトなんだ。

だけど萌ちゃんの場合、可愛さと料理の上手さと性格の良さを足しても頭の悪さが前面に出てしまう。

とっても、可哀想な子なんだ。







「で、萌ちゃん・・・俺に何か用?」

「山崎さんに教えてほしい事があって・・・」



市中見回りの俺の後を一緒に付いて回っている萌ちゃんは、俺に悩み相談をしたいらしい。

正直、面倒事は嫌なんだけど。
萌ちゃんに、関わると、何かに巻き込まれそうな気がする。
イヤな予感しかしない。



「どうして、こんな場所で?屯所に来ればいいじゃない?」

「屯所はダメ!土方さんに会ったら『どうした?萌、心配事か?』とか『誰かに何かされたのか?』とか、お父さんみたいなんだもの」



確か、副長は

”萌は、妹みてェなモンなんだ”

って、言っていた気がするけど。
萌ちゃんの中では、お父さんの位置まで登り詰めてしまったのか。
気の毒な副長。
まだ、若いのに。



「あ、そう・・・」

「そうなの。でも、どうしても山崎さんに会いたくて」



この子の、この言い回しにドキっとする男も多い。
実際、今、思いっきしドキっとしたし。



「あー、萌ちゃん。で、何?」



ドキリとして思わず、声が大きくなってしまったじゃないか。



「私にも、カンサツ・・・の、仕方を教えて欲しいの」

「はいィィィィ?」



ナニ言ってんの、この子。
大体、監察って漢字で言えない子に、何を教えるっていうわけ?



「あのさ、萌ちゃん。俺の仕事、監察って分かってる?」

「うん?カンサツでしょ?あ、観察かな?」



俺の仕事は、夏休みの小学生の宿題じゃねェんだよォォォ。
俺は、大きな溜め息を吐いた。

それなのに。

萌ちゃんは、何だか放っておけないんだ。
それは、俺だけじゃない。
副長だってウッカリ媚薬なんて飲まされちゃったり。
あの日の帰りには、万事屋の旦那が迎えに来たり。

なぜか、みんな萌ちゃんに構いたくなるんだ。

なぜだろう。

それはやっぱり、みんな萌ちゃんがバカだということを知っているからだと思う。



「それで?何を観察したいの?」



もう、観察でいいや。
多分、観察のが正しいだろうし。



「あの、ね・・・」



「実は・・・」と、話し始めた萌ちゃんの瞳は、あの頃のように輝いていた。

そう、あの頃。
副長に恋をして、毎日毎日、屯所に来ていた頃と同じようにキラキラしていた。

やっぱり、イヤな予感しかしないんですけど・・・。

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