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キャンディ#2
▼Q太郎アラワル
「例の彼とは、その後どう?」



「なんにも」と言って、萌ちゃんはアイスティーのグラスをストローでカラカラと回した。



「あのね、山崎さん」



あ、この感覚って久々だなー。
この、嫌な予感。



「な、なに?」



一応、身構えとこ。



だけど、萌ちゃんは「あ、」と言って俺を通り越した所を見た。
萌ちゃんの視線を追って振り返ると、Q太郎が店内に入ってきた。



「萌ちゃん、」

「やだ、どーしよ。山崎さんとデートしてるって思われちゃう、やだァ」



カチン。
そのまま、コッチのセリフだよ。



「・・・大丈夫だよ、向こうは萌ちゃんの事を知らないんだから」



萌ちゃんは、「そっか」と、アイスティーに口を付けた。



まず、俺たちのテーブルの横をQ太郎の友達が通り過ぎる。
彼等が通った後には、何だか変な匂いが残った。

香水、付けすぎだろ!

それから、最後にQ太郎が通り過ぎ・・・



「あ、れ?キミ・・・」



Q太郎は、萌ちゃんを見て足を止めた。



「何か?」



萌ちゃんは、下を向いてしまって話せる状態じゃないので、代わりに返事をした。



「あ、いや、よく店に来ているコだよね?と思って」

「・・・」

「いつも、彼のプレゼントでも探しているのかなって思っ」

「違いますっ!!」



萌ちゃんは、大きな声でQ太郎の言葉を遮った。
周りの客がビックリした顔で萌ちゃんを見た。



「萌ちゃん、落ち着いて」

「あ・・・、違います」

「そ、そう・・・」



萌ちゃん。
Q太郎、若干ヒキ気味だよ。



「あ、の、」



萌ちゃんの瞳は、キラキラしていた。
長い睫毛をユラユラと揺らして、それは恋する萌ちゃん。

瞬きさえ忘れた萌ちゃんの瞳に、Q太郎はどんな風に映っているんだろう。



「あー・・・急に、こんなこと言ったらヒクかもだけど」



Q太郎は、わざと遠く見るように萌ちゃんから視線を外して、



「名前、聞いてもいいかな?」



それからまた萌ちゃんを改めて見据えてキメ台詞を吐いた。



萌ちゃんは、蚊の鳴くような声で「萌です」と言った。



「ありがとう。またね、萌ちゃん」



Q太郎は、とびきりの笑顔を残して仲間の待つテーブルへ向かった。

Q太郎の居なくなった後も、やっぱり変な匂いが残った。



「香水つけすぎだろっ」



ボソッと言ってみたけど、萌ちゃんはぽーっとしていて俺の悪態なんて聞いちゃいなかった。



「萌ちゃん、」



何回か呼ぶと、萌ちゃんは大きな瞳をパチクリとして我に返った。



「あ、ごめんなさい。私・・・」

「ううん、」



ぽーっとなっちゃうのも分かる。
急接近だもんね。



「ヨカッタね、」



萌ちゃんは、頬をピンク色に染めて長い睫毛を揺らしていた。

やっぱり、Q太郎の事が好きなのかな。


副長は。

萌ちゃんにとって副長は、本当に兄的な存在なんだ。
萌ちゃんは、お父さんみたいって言ったけど。

切っても切れない、不思議な糸で結ばれているのかもしれない。

そして、それは赤い糸ではないけれど。



「急展開だ、」

「これから、ど、どーすればいーの?」

「どうするって?」



あ、そうか。
萌ちゃんは、副長にしか恋をしたことがないから分からないのか。



「うー・・・ん」



あれ?待てよ。
普通は、こっからどうすんだっけ?

俺も、あんまり経験ないから分からないぞ。



「ふ、副長に聞いてみたら?」

「土方さん?」



べ、べ、別に面倒事を副長に押し付けたってわけじゃないんだからね。



「あー・・・と、副長は萌ちゃんよりも長く生きてるから分かる、ん、じゃないか、なー・・・」

「そっか。土方さんなら、きっと恋の一つや二つ知ってるかもね」

「そ、そうかもね」

「土方さんの恋かァ。どんな恋をしてきたんだろう」



そう言って、萌ちゃんはアイスティーを飲んだ。
俺と目がパチリと合うと「ね、」と小首を傾げて笑った。

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