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キャンディ#2
▼副長の気持ち
暫くして、副長が屯所に戻ってきた。



「あ、副長。お帰りなさい」

「・・・おゥ、」



副長が戻ってきた頃には、すっかり日が暮れていた。
随分と、萌ちゃんと一緒に居たんだな。



「山崎、」

「はい?」

「萌・・・」

「萌ちゃん?」

「な、何でもねェ!」



副長は、ワシャワシャと頭を掻きながら俺の前を通り過ぎた。



「副長?」



だけど、俺は見逃さなかったんだ。
俺の前を通り過ぎる副長の顔が、赤かったのを。



気になる。


萌ちゃんと、いったい何があったんだ?
副長が、あんな顔するなんて。

気になる、気になる、気になる、気になる!!!!



「副長!」



勢いで、思わず副長室の襖をノックしてしまった。



「山崎か、入れ」



ホントに、勢いだけだった。
俺は、何を話すつもりだ?
特に考えてない。
だって、勢いだけだもの。
気になるだけだもの。


俺は、ゴクリと喉を鳴らして襖を開けた。



「失礼、します」



副長は臨戦体勢で、俺に向かって胡座をかいていた。怖っっっ。

来なきゃよかったよ。
面倒臭ェェェ。



「失礼しまーす」



副長とは、なるべく距離をとって恐る恐る腰を下ろした。



「えっ・・・と、」



自分からノックしてしまったものの、この先、どうしてよいのか分からない。

萌ちゃんと何を話していたんですか、なんて聞けるわけもないし。



「山崎、」

「はいっ」



副長は、煙草に火を点けた。



「萌は、この先、どうなると思う?」

「は?」



知らねーよ。
俺が、萌ちゃんの未来なんて知るわけねーだろ。



「俺は、萌に・・・」



副長は、火を点けただけの煙草を灰皿に押し付けた。
俺は、また喉をゴクリと鳴らした。



「萌に、何が出来る?」

「・・・」



萌ちゃんに・・・



「ふ、くちょー・・・」

「俺の出る幕は、もう、ねェ。けど、萌の為に、」

「副長は、萌ちゃんの事が好きなんですか?」

「なっ?!バカ、そうじゃねェよ。そうじゃねェけど」


そんなに、否定しなくても。
萌ちゃんは、どこまで行っても妹か。
思わず、溜め息を漏らしてしまった。



「何だよ、その溜め息は」

「妹が心配ですか?」

「・・・心配しちゃ悪ィかよ」

「いいえ、悪いなんて言ってませんよ」



少しだけ期待した。

本当は、もしかしたら副長は萌ちゃんの事を特別に想っているかもしれない。

萌ちゃんの気持ちは、まだまだ曖昧だから二人が何とかなるんじゃないかと思った。

でも、それもないようだ。


副長は、やっぱり萌ちゃんを彼女にする気はないんだ。
それは、単純な「好き」とか「愛してる」とかでは片付かなくて。

それでも、副長は萌ちゃんの笑顔を願っていて。



「俺、前に言いましたよね?萌ちゃんは、副長にしか恋をしたことがない、って」

「あ、あァ」

「だったら、副長が相談役になってあげたらどうですか?」

「あ?!何で、そーなるんだよ?!」

「だって、心配なんでしょ?妹が」



だったら、一番近い場所で萌ちゃんを見守ればいいじゃないか。



「萌ちゃんに出来ることって、そーゆー事じゃないですか?」

「・・・」



この先、萌ちゃんの幸せを一番に願う副長。



「萌ちゃんは、全てを受け入れてますよ」

「全て?」

「そうです。副長が彼女という特別な存在を作らないことも、その想いも」



だからこそ、新しい恋を見つけたんだ。



「萌・・・」

「萌ちゃんは、ちゃんと副長の想いを知っています」

「俺ァ、萌に笑ってて欲しいだけだ」

「見守ってあげましょう、副長」



副長は、新しい煙草を取り出して火を点けた。



「そうだな」



副長の吐いた煙は、行き場を無くして天井をゆらゆらとさ迷った。

まるで、このラブストーリーみたいに。

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