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キャンディ#2
▼もしも、
「副、長?」



俺は、恐る恐る副長室の襖を開けながら声をかけた。
何で、こんな事になるかなァ。



「山崎、Q太郎って誰だ?」



怖ェェェェ。
キレてる。
完璧にキレていらっしゃる。

声の低さがハンパじゃない。
瞳孔の開きっぷりが尋常じゃない。



「え?」

「Q太郎って誰だって聞いてんだよ。同じ事を言わせるな」



副長は、俺の胸倉を掴んでいて鼻と鼻がくっ付きそうなくらいの距離。
怖い〜〜〜〜〜。


俺は、覚悟を決めた。



「違うんです、副長。Q太郎は萌ちゃんの彼氏ではないんです・・・まだ」

「まだァ?」



ヒィ、いちいち凄まないで。
怖いから。



「萌ちゃんは、俺に懐いている訳じゃないです。俺に監察の仕事を教えてくれって・・・いや、正しくは観察でしたけど・・・」



俺は、事の始まりを1から話した。
Q太郎は、萌ちゃんの片想いの相手だという事。
それで、監察としての俺にアドバイスを求めて来たこと。


そして、



「萌ちゃんは、」



副長にしか、恋をしたことがないということ。



「副長が初恋の男性だったから・・・どんな風に想いを自分の中で消化したらいいのか、伝える方法すら分からなくて・・・どうやら名前も年齢も分からないみたいで、俺に助けを・・・」

「・・・そうか」

「本当に必死で、」

「そうか、」



副長は、煙草に火を点けて言った。
それが、少し寂しそうに見えたのは俺の考え過ぎなのかな。



「あの、もし・・・もしも、萌ちゃんが今でも副長を・・・」

「は?何言ってんだよ。萌はQ太郎のことが好きなんだろ?」

「そうなんですけど、もし、です」



もし、沖田隊長の言うように萌ちゃんが本当に好きなのは副長だとしたら?
それは、きっと萌ちゃん自身も気づいていない気持ちなんだろうけど。
もしも、そうなら副長は・・・



「別に今と変わらねェよ・・・」

「・・・ですよね」



沖田隊長が、何を根拠に萌ちゃんは副長のことが好きなんだと言ったのかは分からない。
だけど、俺も得体の知れないQ太郎と萌ちゃんが恋仲になることに違和感を感じている。
それなら、やっぱり副長の傍で笑っていて欲しいと思う。



「そのQ太郎ってのが、どんな野郎かは知らねェが萌を泣かすようなマネしやがったら俺は許さない」



それは、兄として?
父親として?
真選組として?

それとも、一人の男として?


何だか、考えれば考えるほど複雑な気持ちになって来た。
俺が、単に考え過ぎなだけなんだろうけど。







「おい、山崎」



出た。
ロクでもない男。



「野郎と何、話してたんでィ?」

「・・・もう全部話しましたよ。萌ちゃんの片想いの話を」

「そうかィ、でかしたなァ。明日はみんなでQ太郎を拝みに行きやすかィ」



妙に楽しそうな顔して。



「沖田隊長がQ太郎は萌ちゃんの彼氏だなんて言うから大変だったんですよ?!」

「そうかィ、そうかィ。そりゃァ結構なことじゃねェかィ」

「は?」



沖田隊長は、笑みを浮かべながら「ジミーには、難しいかねィ」と言って、ヒラヒラと手を振って行ってしまった。

何が?
ジミーって、何だよ。
何が、難しいんだよ。
自分が難しくしてるんだろうが!!


沖田隊長は、萌ちゃんは今でも副長が好きなんだと言った。
副長は、例え萌ちゃんに気持ちがあったとしても変わらないと言った。

だとしたら、俺は、俺のやるべきことは何だろう。



何だか、切ないラブストーリーになってきているような気がする。

この恋は、一体どこに向かっているんだろう。

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