[携帯モード] [URL送信]

キャンディ#2
▼彼女という肩書き
「山崎、ちょっといいか」



副長が、食堂で晩飯を食べていた俺の向かいに座った。



「あー、萌ちゃんが副長を探しに行ったんですけど会えました?」

「あァ。今、送ってきたところだ」



萌ちゃんは、謝るって言ってたけどちゃんと謝れたかな。

トンチンカンな事を言って、副長を困らせてないかな。


って、俺!
何で、こんなに萌ちゃんの心配してんの!



「山崎?」

「あー、何でもないです」

「萌は、随分とお前に懐いてるようだな」

「あー・・・」



懐くってゆーか。



「何か、悩み事があるっぽいんだが」

「悩み事?」

「あァ、言いかけて結局言わなかったりな」



また、思わせ振りな事を。
でも、これって萌ちゃんは無自覚だからなァ。



「俺には話せねェ事か分からねェが、お前になら話すかもしれねェから。そん時は力になってやってくれ」

「・・・はァ、分かりました」

「何だよ、頼りねェ返事しやがって」

「いや、どうして萌ちゃんに肩入れするのかなァって」



だって、萌ちゃんは真選組とは無関係の一般市民だし。
ただ、副長に一目惚れをしたっていうだけの、それだけの子なのに。

しかも、今現在は別の男性に心を惹かれているのに。



「萌との約束だ」

「約束?」

「護ってやるって、」

「だったら・・・」



だったら、"副長の彼女"という肩書きを付けてあげればいいのに。

そう言いたかったけど、飲み込んだ。
副長が、大切な人を作らない想いを知っているから。

それが、萌ちゃんに対しての副長の優しさと愛だと知っているから。



「だったら、萌を俺の彼女にしろって?」



ヒィ、読心術?!



「・・・萌ちゃんの傍に居てあげようとは?いや、副長の想いは知ってます!」

「・・・俺たちは、明日の約束さえ出来ねェからな。お前こそ萌に肩入れしてんじゃねェか」



肩入れしてるわけじゃ・・・



「萌ちゃんって、何か必死で・・・」



そうなんだ。
萌ちゃんは、いつも必死なんだ。
必死で、副長に恋をしていたんだ。



「必死、か・・・」

「はい」

「おー、山崎。いたいた。探したぜィ」



今度は、沖田隊長が食堂に入ってきて俺を呼んだ。

萌ちゃんと同じで、嫌な予感しかしない。

多分、何かロクでもないことを言い出して副長を怒らせるに決まってる。



「ど、どーかしたんですか?」

「おゥ、俺もQ太郎に会わせろィ」



だから、Q太郎って誰だよ?



「Q太郎?」

「土方さん、居たんですかィ。そうだ、土方さんも一緒にQ太郎に会いに行きやせんか?」



おィィィィ!



「Q太郎って誰だよ?」

「萌の彼氏でさァ」

「ちょっと!沖田隊長、デタラメ言わないでください!!」



横目でチラリと副長を見ると、こめかみがピクついていた。



「萌の、彼、氏・・・萌の、」



副長は、席を立ってフラフラと食堂を後にした。

これじゃあ、ロクでもないことを言って怒らせた方がマシだ。



「何でィ、ありゃァ」



お前のせいだろ!



「違うんです!副長」



俺は、慌てて席を立った。
まだ、食事の途中だったけど。
まだ、唐揚げ1個残ってたけど。



「山崎、放っておけ、モグモグ。野郎も子離れする時期なんでィ、モグモグ」

「子離れって・・・」



つーか、俺の唐揚げ食ってるし。
ホント、ロクでもないな。
この人は。



「副長!」

「放っときゃいいんでさァ」



呟くように言ったのが背中越しに聞こえたけど、俺は沖田隊長を振り切って副長を追った。

[*前へ][次へ#]

10/22ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!