butterfly effect
▼flutter・3
周知の事と思うが、俺は幽霊全般が得意ではない。
それなのに、勘だけは良いらしい。
蚊みたいな天人が、屯所をパニックに陥らせた時も早々に何かの気配に気付いた。
自身に於いては、トッシーに身体を乗っ取られるほどデリケートだ。
こんな勘の良さなんて、何の得にもならない。
嫌なんだ。
怖いんだよ。
それなのに、最近また妙な気配と視線を感じる。
それに気付くのは、ふと目が覚めた真夜中だったり市中見回りの町中だったり。
若しくは、食堂だったり、屯所内の至る場所だったり。
実に様々だった。
「用があんなら、出てきやがれ!」
俺は、怖くない!
・・・いや、怖い。
怖いからこそ、正体を明確にしたい。
幽霊でも、エイリアンでも何でもいい。
とにかく、コソコソすんな。
そう思うと、気配はすうっと消える。
そして、また暫くすると現れる。
一体、どうゆうつもりだ。
▽
副長は、疲れているようだった。
何しろ、溜め息が多い。
まァ、溜め息も吐きたくなるだろう。
あの上司に、あの部下。
副長に、心から休まる時なんてあるんだろうか。
早く、お嫁さんでももらえばいいのに。
あ。
でも、やっぱり今でも・・・
だから「人間は、死んだらどこに行くんだ?」なんて聞いてきたのかな。
あの人が、気になるのかな。
ほら、また溜め息だ。
大丈夫かな、この人。
「副長?」
「あ?」
「夜は、眠れてますか?」
「あン?」
え?
俺、何か気に障ること言った?
何で、青筋ィィィ?
「あ、いや、お疲れなのかなァって」
「別に、疲れてねェし。監察がつまんねェ事、観察してんじゃねェよ」
そう言って副長は、煙草を取り出した。
何だよ。
ちょっと心配しただけなのに。
そうだ。
この人は、こういう人だ。
心配されたからって、それに甘えるような男じゃない。
寧ろ、弱味を見せたと思って更に強がってしまう。
何て、不器用な男なんだろう。
「って、危ない!!」
俺が、副長の腕を掴むと「へっ?」とマヌケな声を出した。
「副長!信号!赤ですよ!!」
副長は、きょとんとした顔で俺を見ていた。
「やっぱり、疲れているんじゃないですか?」
副長は、眉間に皺を寄せて辺りを窺っているようだった。俺も、キョロキョロしてみたけど何もない。
副長は、溜め息と一緒に「行くぞ」と言って青になった信号を渡った。
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