butterfly effect
▼flutter・2
−−−死んでも君を守りたい。
その言葉は、なぜか俺の頭の中にひっついていた。
死んでも、
君を、
守りたい。
あの映画を観てから、俺は少しおかしかった。
妙に昔の事を考えていたり、かと思えば未来を見ていたり。
とにかく、思考回路が映画に浸食されてしまっている。
「土方さん、煙草」
「あ?」
火を点けただけの煙草が、灰になってぽとりと落ちた。
どうかしている。
−−−シンデモキミヲマモリタイ。
俺には、未来がある。
見定めた未来なわけではないが、誰にも邪魔される筋合いはない。
俺の、未来。
俺の未来に、アイツを寄り添わせたかったのか。
俺の未来に、巻き添えをくわせたくなかったのか。
どれも、少し違う気がする。
ただ漠然と。
ただ、幸せになって欲しかっただけだ。
それだけ、だ。
俺が幸せにするなんて、大層な事ァ言えない。
俺たちは、
俺は、若すぎたんだ。
「山崎、天気いいなァ」
「え?あァ、そうですね」
俺は、高く澄んだ青い空に手をかざした。
「人間は死んだら、どこに行くんだ?」
「は?」
「そんなモン、死ななきゃ分かんねェよな」
「は、はァ・・・」
俺は、新しい煙草に火を点けた。
▽
「トシが?」
「えぇ。あの映画を観てから野郎の様子がおかしいんでさァ。やっぱり姉上が会いに来るとでも思っているんですかねィ?」
「でもトシは、そのテの話は苦手だろう」
「それが、山崎に"人間は死んだら、どこに行くんだ?"なんて聞いてきたらしいんでさァ」
かぶき町の幻という映画を観てから土方の野郎の様子がおかしいのは、俺だけが感じていることではなかった。
まァ俺は、野郎がおかしいのは元々なので、そこいら辺はさほど気にしちゃァいなかったけど。
そんなことより俺が気になっているのは、野郎はなぜ姉上の墓参りなんかに行ったのか。
本気で、姉上が会いに来ると・・・。
今、しつこいと思ったアンタ。
アルミホイル奥歯でカミカミの刑でさァ。
野郎も、姉上に会いたいと思っているんだろうか。
姉上は、野郎に会いたいのかィ?
俺が、もっと大人だったら、何かが違っていたのか。
俺が、姉上の弟でなければ、二人は違っていたのか。
今さら、考えても仕方ない。
アイツは、気に入らない野郎のまんまでいいんでさァ。
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