キミのためにできること
▼愛してる*
萌。
それは、甘い媚薬のようで。
俺は、萌に溺れた。
いつものように、萌を探す。
「萌・・・」
俺は、萌を抱きしめる。
もう、何度も、何百回と抱いているが、未だに胸が高鳴る。
甘くて、優しい匂いに顔を埋める。
「土方さん、誰かに見られちゃいます」
「十四郎、だろ」
「十四郎、さん」
ほんの少しだけ、萌を感じると俺は満足して仕事に戻れる。
本当は、仕事なんてどうでもいい。
このまま萌と抱き合っていたい。
「十四郎さん、」
「あァ、もう少し」
萌は、決まって優しく背中を撫でてくれる。
それが、心地いい。
張り詰めた糸がプツリと切れる。
癒される。
「よし、充電完了」
「十四郎さん、頑張ってくださいね」
「あァ、」と返事をして触れるだけのキスをする。
いつから俺は、こんな甘ったれになったのだろうか。
「重症だな・・・」
俺は、自分を笑うように呟いて煙草に火を点けた。
▽
萌は、本当に二人きりの時にしか十四郎と呼ばなかった。
「とッ・・・四郎さッ・・・ん」
「萌・・・」
部屋に響くのは、二人の吐息と肌のぶつかる艶めかしい音。
汗ばんだ首筋にキスを落とすと、萌は背中に爪を立てる。
耳元で、愛しい名を呼ぶ。
「萌・・・愛してる」
萌は、更に俺を締めつけた。
それは、俺の言葉に応えているようだった。
「クッ・・・萌、そんな締めンなって」
「とうッ・・・四郎さッ、も、ダメ・・・」
頭の中が真っ白になって、心地いい。
まるで、空でも飛んでいるような気分だった。
くったりとした萌の汗で張り付いた前髪を梳いて、キスをする。
「十四郎さん、」
「ん?」
「ずっと、お傍においてくださいね?」
「あァ、嫌だって言っても離さねェぜ」
そう言いながら、心の中では萌が離れていく訳がないと思っていた。
俺たちは、どんなことが事があっても離れるはずがないと思っていた。
だけど、それは突然やってきた。
ほんの一瞬、だった。
今でも、頭の片隅にこびり付いて離れない。
萌の俺を見る瞳。
「ヒトゴロシ」
そう言った萌の目は、涙に揺れていた。
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