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short story
仔猫の仕事




「‥ああ、それで?」



やっと帰ってきたと思ったのに笹塚さんはずっと携帯を離さない。
私の方をちょっとだけ見るけど、頭の中は恐らく話の内容で占められてるんだよね。

つまんないの

そりゃ、今日は笹塚さんと約束なんかしてなかったし、こんな夜遅くに押し掛けたりしたら迷惑なのは分かってるけどさ。



逢いたかったんだもん



私の心の内なんて知る由もない笹塚さんは相変わらず話に余念が無い。

手持ち不沙汰になった私は笹塚さんのスーツを引っ張った。

「‥朝一で所轄に‥、そうだな‥」

注意を惹く筈がするりと腕を抜かれてスーツが私の手に収まった。

脱がすつもりじゃなかったんだけどな

どうやら長話の内容は仕事についてらしく、笹塚さんの意識は此方に向いてくれない。

‥じゃあ、と思って次にネクタイを外してみるけど、これも失敗。



あーもう、話終ーわーれー!



意地になって笹塚さんをソファに押し倒して首筋にキスをしてやった。

「‥っ!」

さすがにこれは効いたのか、会話が一瞬途切れる。



終 わ れ



声を出さずに唇を動かすと、笹塚さんのひとさし指が私の唇をやんわりと咎めた。



あ と で



苦笑しながらゆっくりと動いた笹塚さんの唇。



仕方ないな



起き上がった笹塚さんの膝の上で私は小さくため息を吐く。



仕方ないからあと五分だけ、大人しくしてあげます



諦めて寄りかかった広い胸は、とても心地好かった。


fin


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