□Buon compleanno!…10/10 A そんなこんなで十月十日。 ザンザスの誕生日当日がきました。 ザンザスはこの日、ちょっぴりいつもよりイライラしながら仕事をしていた。 自分が今日誕生日である事は、朝から大量に届けられたプレゼントという名の貢ぎ物を見て気がついた。もともと誕生日などというものに、ザンザスはさほど興味はなかった。誰に祝われようが嬉しいと思った事もない。 今までは。 今年は違う。 ザンザスにとって大切で愛している綱吉という存在がいる。 暗殺部隊の隊長をしていようが、マフィアだろうが、好きな相手と特別な日に共に過ごしたいと思う気持ちはザンザスにだってある。だが、相手は日本にいてしかもまだ学生の身。一緒に過ごす事は難しい。それならせめて声でもいいから聞きたい。綱吉の柔らかな声で、おめでとうの一言だけでも聞ければとりあえず満足だとザンザスは思っていたのだ。 なのに綱吉から電話がくる事も、プレゼントがくる事もなく、思わずザンザスの方から電話してみても電源が入ってないらしく繋がらない。 もしかしたら綱吉を好きなのは自分だけで、綱吉にとっては誕生日を祝う気持ちもないほど、自分の事は何とも思っていなかったのかとザンザスは落ち込んでいた。 だがその態度はうなだれるとか可愛いものではなく、イライラとあらゆる物に当たり散らすという行動に出ていた。 当然一番被害を被ったのはスクアーロである。つくづく不幸の星の下に生まれたと、スクアーロが思ったかどうかはともかく。 そんなイライラした状態のまま仕事を終え自室に戻ったザンザスは、部屋の中に人の気配を感じて一瞬眉を寄せた。 が、すぐにそれがよく知った温かな気配だと気付き、まさかと思いながら部屋の中を進む。寝室を覗くと大きなベットの上にちょこんと綱吉が座っていた。 「…綱吉」 何で此処にいる…という言葉は飲み込んで近付くと、綱吉は予想外の格好をしていた。 どこから引っ張り出したのかザンザスのシャツだけを羽織った姿でにこっと笑んだ。 「ザンザス、誕生日おめでとう。あ…えーと…イタリア語で確か…」 綱吉は何かを思い出すように首を傾げた後、もう一度口を開いた。 『Buon compleanno!』 にこにこと笑顔で言われて、ザンザスは今までのイライラした気持ちは吹っ飛んだ。愛しい存在が目の前にいておめでとうの言葉。嬉しいという思いがザンザスの中で膨れ上がった。 『Grazie.』 そっと綱吉の額に口付ける。 「それにしても驚いたぞ。まさか此処まで来るとはな」 「ザンザスの誕生日お祝いしたかったんだ。でもプレゼントが決まらなくてさ」 「俺はお前の声が聞けるだけでも嬉しい」 携帯も繋がらなくて心配したとザンザスが言うと、綱吉は吃驚させたかったからと。ヴァリアーの人達にバレないように来るの大変だったと言った。守護者やら家庭教師やらにも協力してもらったらしい。 「でね…プレゼントなんだけど…」 綱吉はザンザスの袖をきゅっと握って上目遣いで甘えるように擦り寄りながら言った。 「あの…プレゼントに、俺って駄目…?」 「……」 教えられた通り、綱吉なりに必死に甘えた声を出してみた。 ザンザスが見下ろせば、ぶかぶかでボタンを数個外したシャツから胸元が見えるように。裾から覗く足もよく見えるようにして。 「俺を貰って…?」 ビアンキ曰わく涙目なら更に完璧らしいが、綱吉にはそれはちょっと無理だった。なにせさっきまで満面の笑顔をしていたし。 ザンザスは暫し固まった後(しっかり胸元と足は眺めた)、綱吉の頭を撫でながら額にキスをする。 「綱吉、お前その言葉の意味を分かって言ってるのか?」 「え…と…大体は…」 「そんな格好で貰えって言うことは…。お前を俺のものにしてもいいのか?」 「…うん」 綱吉は恥ずかしくて赤くなる顔を隠すように、ザンザスにぎゅうと抱きついて、その胸元に顔を埋める。 「…抱いていいのか?綱吉」 「いいよ…」 小さく、けれどはっきりとした返事に、ザンザスも綱吉を抱きしめ返しながらそっとベットに押し倒す。顔中のあちこちにキスをして、唇にも口付けた。 「途中でやっぱり嫌だっつってもやめねえぞ」 「ん…」 ザンザスは綱吉をたっぷりと頂いて、今までで最高に幸せでいい誕生日だったと思うのだった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |