バレンタインに、キスを
「名前ちゃーん。銀さんにチョコはないのー?」
2月14日、私の最愛の彼の第一声であった。
他に言う事はないのか!
「銀ちゃん何かにあげるチョコはありませーん」
「あれ?今、銀ちゃん何かって言わなかった?ねぇ言わなかった!?」
「うっせーこの天パ」
「ちょっと名前ちゃぁぁん!?天パって言ったね!?何かこう、天然パーみたいに言ったね!?」
全くこの天パは気付いてないみたい。
男ってそんなもの?
付き合って・・・今日で一年なのに。
「だいたい!銀ちゃんは糖尿病寸前でドクターストップかかってるんでしょ!?そんな人にはチョコあげれません!」
これは、もっともな意見だと思う。
チョコなんて、糖分の塊!
糖尿病には最悪なものである。
「でも名前ちゃん・・・銀さんは、この日の為だけに!毎日の楽しみやら、一週間に一回のパフェを我慢したりしたんだぞ!?」
「うっ・・・」
うるうると私の弱い目をして見つめる銀ちゃんは、確かに最近糖分糖分言っていなかった。
ファミレスだって誘われなかったし、チョコ買って来てとかも言われなかった・・・気がする。
でも、用意してないものは、してない。
ないものは渡せない。
しかも・・・一周年を忘れるような人にはなおさらあげたくない!
「・・・」
「・・・」
長い沈黙。
「・・・ったく、仕方ねぇなあ」
先に破ったのは銀ちゃんだった。
「…?」
「ちょっと待ってろ」
そういって、部屋の奥へ入っていった。
・・・何が、仕方ない?
こんな私、嫌?
「ぎ、銀ちゃ・・・!?」
やっぱりチョコ用意するよ、と言おうと立ち上がった私の前に、突然銀ちゃんの手。
銀ちゃんの手には、小さめのだけど立派な紙袋。
「・・・へ?」
「開けてみ」
開けると、そこには小さな箱。
「これ・・・」
「まぁ、ちょっとそこ座って」
そう言われてさっきまで座っていた場所にまた座る。
すると、銀ちゃんはその前におもむろにひざまずき、
「俺と、結婚してください」
小さな箱の中には、小さな指輪。
「・・・はい!」
お礼に
バレンタインに、キスを
(チョコじゃなくてごめんね)
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