ただそれだけで
バレンタインデー
それは誰にでも訪れ、誰にでも一度は嫌な思い出のある日であろう日。
私もそのうちの一人である。
告白できなかった上、チョコを渡すタイミングをことごとく逃したあげく、そのまま家に帰った。(結局はチョコは自分で食べた)(だって腐ったら折角成功したのにもったいない)
そのあと散々泣き喚き(弟にアホかと言われた)友人に今からでも遅くないよ!と励まされ。
そして、4日後の今日に至る。
チョコは甘さ控えめ。男の人って甘いの好きじゃない人が多いらしいから。
ラッピングも十分に気合を入れた!
そうこう考えているうちに、応接室の前まで着いた。
・・・彼は、ここにいる。
いざっ!
「失礼しましゅ!」
か、噛んだ!いや、今はそんなことを気にしている場合ではない!突撃あるのみ!
「・・・誰、キミ」
いいいいた!!!
彼、雲雀さんは奥のいすに座って書類に向かっていて、私を見もせずに一言。
正直、怖い。
でもここで引き下がったら4日前の二の舞だ!
「あ、あの苗字名前と申します!」
「そう」
「あ、あの・・・えっと・・・」
「用が無いなら出て行ってくれる?」
き、きつい。
門前払い!?やっぱり、雲雀さんは噂どおりの人だ。
でも、ここが私の見せ所!新生私は折れないんだから!
「用ならあります!これ、もらって下さい!」
深くお辞儀した状態でチョコを雲雀さんに向かって差し出す。なので彼の表情は見えない。でも言ってしまえばこっちのもの!頑張れ新生私!
「・・・何これ」
「チョコです!」
「バレンタインとやらはもう過ぎたよ」
「私にとってのバレンタインは今日なんです!」
「・・・キミ、馬鹿?」
「馬鹿です!」
あぁ、もうやけくそだ!
これを受け取ってくれれば、それで良い。
もらった後捨ててあっても良い。
一旦受け取ってもらえれば。
「・・・そう」
手からチョコが離れる感覚。
「ありがとう」
ちっさな、ちっさな感謝の言葉。
「・・・ありがとう、ございま、す・・・」
嬉しくて嬉しくて、涙が止まらなかった。
ただ、それだけで私の心は満足なんです。
無料HPエムペ!