コンシェルジュの憂鬱。
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海外の大学に行っているという愁さんは、サマーバケーションの間、日本に居る祖母を見舞いに行っているらしい。
私が知らない事を何でも知っている愁さんの話しを夢中で聞いて、とても楽しくて。
笑ったりも、した。
愁さんが同じバスに乗るのに気付いて1ヵ月、会話を交わす様になって1ヵ月。
自分にとってその時間がかけがえのない物になった頃、愁さんの夏休みが終わったらしい。
終わったらしい、と気づいたのは愁さんが急にバス停に来なくなってから。
先週まで何も変わった所はなかったのに、突然姿が見えなくなった。
何かしたかな、気に障ったのかな、なにか、僕が…
沢山考えて、考えて、暫くしてから、ああ大学のサマーバケーションは2ヵ月だったのか、と知った。
僕が待ちきれない程楽しみにしていた週2日、愁さんにとっては面倒臭かったのかな。
当然の事だと思えた。滅多に喋る事も、表情を変える事もない子供と一緒に居て、楽しい訳がない。
きっと気紛れに声を掛けてしまい、面倒ながらもバスが一緒だから、相手をしてくれていたのだ。
そう考えついた時、涙が零れた。
今まで、何をされても泣いたことなんてない。
泣いても意味がない事くらい知っていたから。
だけど涙が零れた。
変わらなくちゃ。
また会えるかもしれない。
いや、会うだなんて恐ろしい事できるはずない。
だけど顔が見たい。
何処の国の大学に行っているかも分からないけど、また顔をみられるかもしれない。
僕を嫌いにならないでほしい。
愁さんの声で呼んでくれた「アキ」なんて忘れて欲しい。
変わらなくちゃ。
愁さんに、会える様に。
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