コンシェルジュの憂鬱。
32
ふ、と藤堂様は目を細めて笑う。
その笑みが妖絶すぎて色気が垂れ流されていて、まともに見てしまった私は更に身体が熱くなった。
「目元を赤くして…潤んだ瞳で俺を見て。濡れた唇から舌が覗いて。」
そう言いながら頬を包み込むように手を当てられ、親指が唇に触れる。
「それにいつもより素直な反応。―――誘われているのかと勘違いしてしまうよ。」
親指が口の中に少しだけ差し入れられ、舌をなぞられる。
「…ぁ…っ」
どうしよう、どうしよう。何て返せばいい?
心臓が煩く鳴って、頭の処理能力が追いつかない。
どこか霞み掛かっていて、上手く考えられない。
ただ、藤堂様が私に触れて下さっているのだけが鮮明で、私に…欲を覚えて下さるのかと。
幸福感が私を襲う。
無意識に口内にある藤堂様の指に、舌を這わした。
「…!」
藤堂様が、驚きに少し目を見開いたのが分かった。
「あ…っ申し、訳…!」
その顔を見て、はっと我に帰った。
な、なにをしているんだ私は…!
恥ずかしくて目線を下げる。
だから、藤堂様が参ったように苦笑したのは分からなかった。
「――すまない。やはり、誘われている様だね。」
私が顔を上げた時には、以前にも見た楽しそうな笑みを浮かべていた。
「ん…っ、ぐ…ぅあ、」
藤堂様の指が、奥へ奥へと私の口内を暴れまわる。
「舌を絡めて、明人。…そう、上手。」
上顎、舌下、喉奥……もう触れる所はない程に遊ばれる。
苦しいはずなのに、藤堂様に耳元で囁くように褒められると、腰に熱がいくのが分かった。
飲みきれなかった唾液が喉に伝う。
下を向こうとしても、藤堂様の手で支えられ許してくれない。
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