コンシェルジュの憂鬱。
3
「見目もいいが、その表情がいい。すべて作り物めいていて、逆に気持ちがいいよ。」
確かによく言われる。仕事だからという部分もあるが、基本的にこんな感じなのだ。
「うちの部下たちにも見習わせたいことだね。」
幡野様が言ったとき、最後の一口を飲み終わった。
「幡野様にそう言って頂けると幸いです。では、申し訳ございませんがそろそろ下がらせて頂きますね。」
微笑みながらそう言い、了承が出た所で礼をして退出する。
勿論ワインのお礼も忘れない。
玄関を出てオートロックが閉まったのを確認し、エレベーターに乗って受付に戻ると調度、藤堂様がお帰りになった所だった。
藤堂様は投資家で、今年30歳になられる。
アメリカの超名門大学を卒業後、暫くあちこちに居たらしいが、去年―私がここに配属されてすぐ日本に拠点を移したらしい。
あちらでは政府に助言を求められる程の腕で、若くしてかなり儲けてるとか。
彼が投資した先はどんなに潰れそうでも必ず巻き返し、さらに何倍も大きくなると、もはや伝説になっているとか。
さらに黒髪青目のかなりの美貌で、滅茶苦茶モテてかなりの遊び人とか。
「お帰りなさいませ。藤堂様。」
「ああ、ただいま。」
今日も海外のブランドで高級感溢れる、でも決して嫌みにはならない様に決められている。
藤堂様は特に何か言うこともなく、そのままエレベーターへ向かう。
後ろ姿だけでも見たくなるのを我慢して、扉が閉まるまで礼を続けた。
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