コンシェルジュの憂鬱。
17
「あ、の、少し寒いので…」
頭が混乱したまま何とかそれだけ言うが、途端に指の力が増す。
「…本当に?それだけ?」
ぐりぐりと強くしながら、私の顔を覗き込む。
「とっ藤堂様!おふざけが過ぎませんか?」
「ふざけてなんかないよ。可愛がってるだけ。」
そうにっこり笑って、今度はそこに唇を寄せた。
「っ…!ぁ、ゃっ…とう、堂様…!」
ちゅ、くちゃ、とバスルームに相応しくない音が響く。
これ以上はさすがにまずい、と藤堂様の肩に手を置き離そうとするが、全く離れない。というか邪魔になっている様子もない。
私も力が抜けてきて、でもこんなのは…っと思った瞬間、カリッと甘噛された。
「ひやあ…!?」
思わず声が出て、同時に今度は強く吸われる。反対側は指で転がされ、もう我慢出来なくなって、藤堂様にすがる。
すると藤堂様は顔を上げ、信じられない程いやらしい笑みを浮かべる。
「斉賀くんのは本当に可愛いね。痛い方が好みなのかな?」
「なっ…っ」
否定しようとした所で、いつボタンを外されたのか、直にそこを触られた。
「うあっあっなに!?」
そのまま強めに指でつねられ、転がされ、たまに優しくなる。
藤堂様は私の顔をずっと覗き込んでいて、それに耐えられなくて目をぎゅっと閉じた。
それを咎めるようにさらに強くつねられ、引っ張られる。
思わず目を開けると、藤堂様の楽しそうな青と目があった。
「あ、や、やだ、なに?なんか、へん、」
涙が出てくる。
余りに馴染みのない感覚で、どうしたらいいのかわからない。
それでも目を離せずにいると、ふと藤堂様の目が不思議そうに丸められた。
「あきひと、人にここを触られたこと、ないの?」
ない。だって、藤堂様が忘れられなかったのに。元々潔癖症だし、淡白だし、だけど、そんな事を言うのは悔しいし恥ずかしい。
この歳で童貞なんて、世間からすればあり得ないことくらい知っている。
だけど自分は一生することはないと思っていた。
12年前、あの時以来、藤堂様と以外なんて考えられなかったし、会えるなんて、ましてやこんな事になるなんて思ってもみなかったのだ。
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