コンシェルジュの憂鬱。
16
54階に着き、玄関の前で深呼吸をしてからチャイムを鳴らす。
しばらく待って出ないのを確認し、マスターキーで部屋に入った。
「失礼致します。藤堂様、お借りしていたシャツを持って参りました。」
声を掛けるが返事がない。水の音が聞こえるので、シャワーを浴びているのだろう。
想像してしまい、顔が熱くなるのを抑える。
中までいくと、シャワーの音が止まった。
「こっちだ、斉賀くん。持ってきてくれる?」
バスルームの扉の向こうから声が掛かる。
「畏まりました。」
そちらにいくと、ドアが開いた。
「――っ、」
藤堂様は腰にタオルを巻いただけの状態だった。
細身なのに、筋肉が、いつもは隠された筋肉に、雫が伝って、
「どうかした?」
「っいいえ。なんでもございません。こちら、お借りしていたシャツです。本当にありがとうございました。それからこちらは大した物でなく恐縮なのですが、お礼の――」
藤堂様がからかうように言うので、つい早口で捲し立ててしまう。
「ああ、いいよそんなの。それよりお礼なら、背中流してくれない?」
「……は、」
……え?
呆然としてる間に中に連れ込まれ、ボディソープとスポンジを渡される。
「え、あ、の…」
「ん?早く。風邪引いちゃうよ。」
「あ、は、はい。失礼します。」
何だかよくわからないが、お礼なら、と言うのだ。しない訳にはいかない。
「…強くはありませんか。」
「ん、大丈夫。きもちーよ。」
頼む、私の手、震えるな!
念じながら背中も極力見ないように洗っていると、突然上からお湯が降ってきた。シャワーだ。
「あ、ごめんね。切り替えるの忘れてた。」
そう藤堂様はいうが、絶対に嘘だ。
あの日の様に、制服は白。Yシャツだらか透けやすい。
かなり悪い笑みを浮かべながら、藤堂様は鏡越しに私を見る。
と、思ったらこちらを向いた。
「あれ?可愛いピンクが、勃ってる?」
そう言って、また私の乳首を今度は優しく擦る。
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