コンシェルジュの憂鬱。
10
だが逆にそれが良かったのだろう、私はなんと名前を覚えて頂いた上、たまにだが呼んで貰える。
しかも、しかも私の表情を面白いと、気に入って貰えた。幡野様と同じ様な理由で。
おそらく軽く馬鹿にされたのだろうが、彼はそんな事、結構に親しくなくては言わない。
しかも笑ってもらった。(笑われた)
住人の皆様には良くある事だが、自慢のワインをご一緒させていただく事も何度か。
そんな幸せな日々の中、久々の土曜日曜、二日連続の休日。
私は世話になった施設に足を伸ばした。
電車で4時間程。少し田舎の、駅からバスで15分。
私が施設を出てから外観も変わったが、温かさは変わらない。
「あき兄ちゃん!」
「あき兄ちゃんだーっ」
「あき兄仕事はっ?きょう泊まるの?」
「わたしっわたしあき兄ちゃんと一緒に寝たいー!」
「わたしもーっ!」
「あき兄は僕たちと寝るのーっ」
施設に入ると、外にいた10人近くが一斉に駆け寄ってきた。
「みんな元気にしてた?院長先生に心配かけてない?今日は久しぶりに泊まりに来たんだ。みんなで一緒に寝ようか?」
私の質問ひとつひとつに、みんな一緒に嬉しそうに頷く。
…可愛いなあ。
なごんでいると、外の様子に気付いたのか、残りの子達と院長先生が中から出てきた。
「あらあら、明人くん人気者ねえ。今日は泊まるのよね?とにかく中に入りなさいな。」
「兄ちゃーん!来てきて!新しいゲーム買ってもらったんだぜ!」
「そうなの!健斗くんがすっごく強いの!」
「あき兄ちゃん健斗やっつけてー!」
そのまま中に入り、流れでいきなりテレビの前に座らされる。
笑いながらコントローラーを取り、健斗と戦う。
初めてだったので最初は負けたが、2回目からは私の勝ち。
結局、健斗が勝つまで続けさせられた。
…手を抜くと分かるのか、すっごい怒るんだよね。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
無料HPエムペ!