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コンシェルジュの憂鬱。




「結城様、お帰りなさいませ。配達物が届いております。」

「ああ、後で部屋に届けてくれ。」

「畏まりました。」

「それから、明日××に新店舗オープンの祝いの花を。」

そういって一万円札を数枚渡される。

「はい。手配いたします。」

そのままエレベーターに向かう後ろ姿に礼をし、扉が閉まってから頭を上げる。

ここは都内の中心地にあるマンション。
24時間警備員在中、コンシェルジュ在中、マスコミ対策万全、トレーニングルーム、室内プール完備。専用シェフも居る、
54階建てのデザイナーズマンション。
所謂、一流マンションだ。

私はそこでコンシェルジュをさせてもらっている26歳、斉賀明人(さいがあきひと)。


短大卒業後、一年間本社で礼儀作法からすべて学び、幾つかのホテルやマンションで経験を磨いてきた。

その努力が結ばれたのか、このマンションに去年から配属されたのだ。


「お帰りなさいませ、幡野様。」

「ああ。何か伝言は?」

「いえ、本日はお預りしておりません。それから昨日仰られた、ソ・ランジュのディナーを二名分、予約してあります。」

「おや。良く予約できたね。ありがとう。」

「畏れ入ります。」

ここに住んでいる方々は、皆様成功者ばかり。

誰でも知っている大企業の社長だったり会長だったり、有名俳優だったり、世界で活躍なさる方も大勢。

その方々と対応するには、勿論こちらも相応の人間でなければならい。




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あきゅろす。
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