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 ぱしっ、という乾いた音と共に白く眩い光が生まれた。

 あ、しまった。フラッシュ切るの忘れてた。

 日が沈み始める時刻。昼間の喧騒は烏がのんびりと浮かぶ紅い空に吸い込まれ遠ざかる。

 猟奇殺人という一種の荘厳な儀式が行われたこの場には、もう数える程の捜査官しか残っていなかった。

 白衣の男は小さく息を吐き、もう一度デジカメを構えた。

 赤黒い斑点が付着した、背の低い草。
 赤黒い斑点か付着した、木の幹。

 それを男は黙々と撮り続けた。

 機械的にシャッターを押しながら男は今日の出来事をぼんやり反芻した。

 昼に数メートル離れた草むらであの性別年齢不詳の死体の一部を見つけただけで、特に面白いことも起きていない。

 しかもその肉体の断片を見る限り、明らかに素人の仕業で、彼に微塵の興味も与えず、寧ろ不快感が募った。

 醜い断面だ。

 白衣の男は吐き気を堪えてその“一部”を観察した。
 吐き気を覚えたのは、グロテスクな所業に繊細な神経が障ったからではない。
 合成着色料と古い油とその他諸々をドカドカと混ぜた食料と言えないような食品を食べた後のような粘つく不快感だ。
 

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