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 【もう一人の身元はまだ判明せず、警察は調査を……】

 「やあねえ、こんな事件が近所で起きるなんて。この前は葎景高校で殺人事件があったばっかりなのに」

 葎景高校。僕が彼の命を受け、一人を屠った場所。

 あの時の獲物の肉の感触と、喉をめがけて奔流してきた血の味を思い出して、僕は地面に唾を吐いた。

 「でも坊ちゃんの学校は安心ですわよね、ガードマンがたくさん警備しているし、防犯カメラもあちこちにあるし、学校の壁も高いし」

 彼の通う学校は良家の子女が多く、必然的にセキュリティーも高くなる。

 しかしその所為で学校というより監獄のような物々しい空気が立ち込めているとか。

 十数分後、新品同様に折り目の綺麗な制服に身を包んだ彼が玄関を出た。

 黒いズボンに、黒いベスト。ベストの下には黒いネクタイが巻かれた白いシャツ。

 今から葬式に行くんですかと尋ねたくなる位に黒で統一された寒々しい制服だ。

 そんな制服を完璧に着こなした彼は、上等な革靴の爪先を僕に向け、歩み寄ってきた。

 聴いてた?

 彼はそう呟くと、微笑を浮かべた。
 愛しくて愛しくて仕様がない、彼の笑顔。

 聴いてた。7人って、どういうこと? やったのは6人なのに。

 知らない。

 彼は言った。

 …放課後、寄ってみようか。

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