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 二人が食堂に移動し、彼が無言で黙々と朝食を食べるのをバケモノの耳で聴いていた。

 「あ、坊ちゃん。ちょっとテレビつけていいですか? 朝の占いが観たいので」

 彼は言葉を発しなかったが、頷くか何かしたのだろう。不意に彼のでもお手伝いさんのものでもない、事務的な男の声が聴こえた。

 【次のニュースです。今朝未明、○○区の平須公園で7人の惨殺体が発見されました】

 僕は地面に預けていた背中を起こした。

 【うち、6名は地元でもよく知られた非行グループで…】

 「あらぁ怖い。ここって近所の幽霊公園じゃない」

 お手伝いさんの非難しているような、しかしどこか微量の興奮を孕んだ声。

 幽霊公園とは地元の住民があの公園につけた別名だ。

 何年か前に男が公園で首吊りしてからあの公園は憩いの場ではなくなり、不吉で危険な空気を凝縮させた曰く付きの場に成り下がった。

 昨日のような醜行は日常茶飯事に起こることらしいし、酷い時には違法薬物の売買や族の集会や、コートの下は全裸という頭が湯だった人種も登場するらしい。

 ビルの山の間に生まれた、非常識の掃き溜め。

 そんな歪んだ場所に足を踏み入れている彼も、やはり普通の人間とは一線を画しているのだろうか。

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あきゅろす。
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