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 冷たく湿った土が傷が持つ熱を冷ましていくようで、心地良かった。

 僕はいつものように庭の低木の中に隠れていた。
 少しだけ違うのは、僕の脇に彼が持ってきてくれた救急箱があることと、僕の足下には血と膿に汚れた大量のガーゼが転がっていることだ。

 木綿糸で縫合してあげようか、という彼の申し出を丁重に断り、僕は患部に消毒液を漬けたガーゼをあてた。

 ひたすらあて続けた。

 夜が白み始める頃、傷口は出血どころか傷口までなくなった。

 流石化け物、と僕は自分で自分を讃えた。
 ついでに傷口に当てていたガーゼを放り、新しいのに変えた。

 今にも自壊しそうな自転車の音が近付いてくる。
 彼の屋敷のお手伝いさんで、もう六十近い女性だ。

 彼女はいつものように裏口に自転車を止め、屋敷の扉のパスワードを解除して中に入っていった。

 あの人が来たってことは、もう五時半か。

 ちちち、とどこかで小鳥が囀る。

 気持ちの良い朝だ。





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