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シゲさんの背中が好きだった。
そこまで大柄ではないけれど、僕にくらべれば大きな背中。そこに垂れる金の髪。
いつだって僕が追いかけて、追いかけて、それでも届かないその背中。

「んんー…?」
テレビを見ていたシゲさんの背中に、ぴったりとくっついてみた。
あんなに遠い背中が、こんなに近くにある。
それでもやはり、どこか遠い。

何も言わずに引っ付く僕に、シゲさんはどうしたんやと小さく笑った。
その声は、普段より少しトーンが低い。これは今に限ったことじゃない。僕と二人の時は、外で話している時より声のトーンが落ちる。
口数だって少ない。笑うことも少ない。それこそ、教室や部活の時の彼とは別人のように。
しかし、僕といるのが退屈だからだとかいうわけではなさそうだ。その証拠に、二人きりの時の彼はやけに穏やかな表情をしている。
普段のシゲさんが作り物だとは言わないが、こちらが素なのかもしれない。
僕といるときは、安心してくれているのかな。皆が知らないシゲさんをひとりじめしていると思うと、なんだかこそばくなった。

ぴたりと身を寄せる僕に、引っ付き返すこともせず、拒むこともせず。ただこちらを見て、目を優しく細めるだけ。
背中はあんなに遠かったけれど、シゲさんの心はこんなに近くに在るんだ。
シゲさんに向けて、しまりなく笑い返した。









ひとりじめ









2013.2.26


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