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彼の耳に言葉の粒たちを押し込めた。
他には誰もいない空間なのに、他の誰にも聞こえないように手で覆って。
間違って零れ落ちてしまわないように、唇を彼の耳ぎりぎりまで近づけて。
この気持ちが一滴残らず彼に届くようにあっためて。
好きだよ、好き、大好き。

彼の白い肌がほんのり紅く色づいたのは、俺が届けた想いが、一滴も零れず彼に染み込んだからだろうか。
「アレン」
彼の名前はありふれていて、埋もれてしまいそうになる。だから俺は、一文字一文字大事に呼ぶよ。
特別な君の、特別な名前だから。大切に光を灯そう。

恋をすれば世界が変わる、なんてバカらしいと思ってた。けれど俺もそんなオメデタイ奴等に仲間入りしてしまったのかもしれない。
頭の悪い人間たちが蔓延る世界。大好きな彼が傷ついてしまう世界。悲しみが次々に産み出される世界。
だけどどうして、彼のそばにいると、世界はこんなにも、優しい。
「ラビ」
ただの記号でしかないその言葉の羅列も、彼の喉を通って出た途端、花のように薫る。


壊れたAKUMA達の真ん中で、静かに彼にキスをした。









world









2012.12.18


あきゅろす。
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