太陽が海の向こうへと姿を隠し、空が、町が、世界が闇に包まれていく。そんな中俺達が生み出し続けるのは、破壊音と断末魔。あとからあとから溢れ出すAKUMAを半ば作業をこなすように壊していった。 辺り一面を覆うオイルと血の臭い。いつの間にこんなものに慣れてしまったのか。いつからこんなに麻痺してしまったのか。 嗅ぎ馴れたそれらに吐き気をもよおすことはないが、それに違和感を覚えない自分に吐き気がする。 そしてふと、たまに、呆然と考えるのだ。俺は今、何をやっているのかと。 きっと世界のどこかには、毎日平々凡々にひっそりとしかし幸せな生活を送っている人達もいるのだろう。暴力や争いとは無縁の生活。実に素晴らしい。 ブックマンを継ぐことを選んだのは自分だ。学習しない人間達に落胆したのも自分。 しかし、何かの拍子に見知らぬ人々への言い様のないどす黒い感情が込み上げてくる。これが嫉妬だと言うことにはぼんやり気づいてはいるのだけれど。 だとすると俺は一体なんの為に闘っているのか。こんな事を考えている間にも自然と手足が動くほどに争いに慣れ親しんで。本当にこれでよかったのか。 「最後の、一体!」 共に闘っていたアレンがそう声をあげた。あれだけいたAKUMAも気づけば残り一体になっていたのだ。低レベルなAKUMAばかりだったとは言え、ほぼ無意識に倒しきるなんて俺ってば優秀。心の中で自嘲して、AKUMAを倒した衝撃波で尻餅をついたアレンに手を差し出す。 「おつかれさん」 「ラビも」 途端に静かになった元戦場に、俺たちの声だけが響く。虚しいな。 どうにも今日の俺はセンチメンタルなようだ。 「あ、一番星」 俺の手を借り立ち上がったアレンが、空を見上げてへらりと笑った。何故この戦闘のあとにそんなくだらない事で笑顔を溢せるのか。 しかしその笑顔を見ていると今までごちゃごちゃ考えていたことがどうでもよくなってきた。 アレンがこうして笑っている。それだけで俺がここにいる理由は十分じゃないのか。 その笑顔をまた見たい。それだけで俺が闘う理由は十分じゃないのか。 キラリと光った一番星に、バカでかい笑顔を送ってやった。 教えてくれよ 2012.3.14 |