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何やら視線を感じて吸い寄せられるようにそれを辿ると、ばちりとシゲさんと目があった。
見えない糸で結ばれたかのように、視線はお互いからずれない、ずらせない。

ふいに、じっとこちらを見つめていたシゲさんがふっと表情を緩めた。
へらりとした掴み所のない、しかしとても優しい笑み。綺麗な笑顔ではないけれど暖かくてきらきらしていて、僕は頬に熱が込み上げてくるのを感じた。
なんだろうこの感情。あの笑みが自分だけに向けられていると思うと、照れ臭くてでもふつふつと沸き上がる幸せな気持ちは誤魔化せない。くすぐったい。

僕は感情が溢れるままに零れだした笑顔を、そのままシゲさんに送り返した。
さっきよりちょっとだけ、シゲさんの笑みが深くなった気がした。


「幸せそうなとこ悪いが、練習始めるぞ」
「!…水野くん!」
僕らの間を横切るように通り抜けた声に肩が跳ねた。どこか呆れたような表情を浮かべる彼に、僕は苦笑いを返すしかなかった。
「なんやタツボン、嫉妬かー?そんな顔してもカザはやらんで」
ニヤニヤと笑うシゲさんに水野くんはバーカ、とだけ返した。
「ポチは俺のポチやもんなー?」
にゅっと伸びてきた腕が僕の首に回され、さっきの比ではないほどに顔が真っ赤になる。
「しっ、シゲさん…!」
しどろもどろになりながら彼の名を呼ぶのが精一杯だった。ああ、心臓がうるさい。
「わかったから、練習始めるって言ってんだろ」
「しゃーないな」
離れていく温もり。シゲさんを見上げると彼はにっこり笑って僕のおでこに、ちゅ、と触れるだけのキスを落とした。
「…!?」
付き合っていられないとでも言うように、踵を返して歩きだした水野くん。ほら、行くでとシゲさんに手を引かれるまで、僕はぽかんと立ち尽くす事しかできなかった。
そしてまた、向けられたシゲさんの笑顔に、僕の鼓動が休まることはない。









瞳と瞳












ツイッターでお世話になっている凪さんに投げつけた物です。ここに上げてよかったのかわからないですがまあいいよね!^p^
2011.9.5



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