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「シゲさん、いいんですかほんとに」
じっとシゲの目を見る風祭が手をついた食卓の上には、風祭お手製のもんじゃ焼きとコンビニで買ってきたコーラ。

「んー?」
「せっかくの誕生日なんだし、もうちょっと豪華に…」
「ええねんええねん。ってかこれが好物やねんからこれがいい」
「…そうですか」
まだ少し納得いかない様子の風祭だったが、それは飲み込み頷いた。
向かい合って腰を下ろすと、二人はグラスを手にした。
「それじゃあ改めて、誕生日おめでとうございます」
「おおきに!」
カチンとグラスの縁が小気味よい音を立ててぶつかる。乾杯のあと、シゲはコーラを少し口にし、そして手に持つものを箸へと切り替えた。
その間、らしくない事に彼の頬は緩みっぱなしで、目はとてもとても優しい色を宿していて、祝う側のはずの風祭がなんだか照れ臭くなってきた。
「カザ、」
漸く風祭も箸を手にした所で、シゲは相好を崩したまま彼の名を呼んだ。風祭が顔をあげると、さっきより幾分か悪戯っぽさが混ざった笑みを浮かべたシゲと視線がかちあう。
「あーん!」
「あ、あーん?」
思ってもみなかった言葉を投げられ、風祭は目をぱちぱちとしばたたかせる。シゲはと言うと口をまあるく空けて、己の口を指差した状態でニコニコと笑っている。
風祭の問い返しにただ笑って大きく頷いたシゲに逆らう術など彼は知らない。
頬を赤く染めながらも、風祭は彼の口にもんじゃ焼きを放り込んでやった。
「うん、うまい!」
真っ直ぐな称賛に、風祭ははにかんだ。シゲの事を言えないくらいに風祭の頬も緩みっぱなしになってきたが、しかし彼にはどうする事も出来なかった。ただ幸せで、幸せで、幸せで。

「カザ」
名前を呼ぶとほぼ同時に、風祭の唇にシゲのそれが重なった。
シゲが一つ歳をとってから初めてのキス。ソースの味しかしないはずのそれは、何故かとても甘くて、風祭の脳裏に冷蔵庫に隠しておいたこれまた手作りケーキが過ぎった。
もうちょっと甘さ抑えめにしてもよかったかな、そんな事を思いながらシゲの背中にそっと手を伸ばした。









糖度120パーセント













2011.7.8



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