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修学旅行みたいだ、はしゃいだいつものメンバーの顔を見て俺はそう思った。

週末、たまたま杉村の家の人が出払っていて、そして上手く皆の都合が付いたので杉村家の好意に甘えてお泊り会が敢行された。メンバーは俺、ノブ、三村、豊、そして杉村。
缶ビールの空き缶をそこいらに転がてワイワイと話しながら、きちっと整頓された杉村の部屋に俺はどこかそわそわしていた。
遊びに来たことがないわけじゃない、しかし泊まりは初めてだ。杉村がいつもここで寝ているのかと思うと何とも言えない気持ちになるので、ベッドはなるべく視界に入れないようにしている。

「七原クーン?さっきから落ち着かなさそうだな」
三村がビール片手に意味深な笑みを浮かべた。俺と杉村がそういう仲にあるのは何故か周知の事実になっているらしく、三村や豊は頻繁にからかってくるのだ。
しかしそれって正直かなり照れる。俺がさらりとかわせないから、こいつらもからかってくるのだろうけど。
「べ、別になんでもない!」
「秋也、ごめんねー?初めてのお泊りなのに俺達も一緒で」
豊が悪びれるそぶりもなくニヤニヤ笑って言った。こいつらは全く…!
ノブはノブでのほほんと笑って見ているだけで助けてくれそうにないので、杉村に視線を送る他なかった。

杉村は呆れたように相好を崩すと、俺の頭にその大きな手をぽんと乗せた。
「あんまりからかってくれるなよ」
細くて、しかし骨張った長い指が、ふわっと俺の髪を掬っていった。
「おーおー、見せ付けてくれるねぇ」
三村がどこかつまらなさそうに呟く。
「…三村、嫉妬もほどほどにね」
「わかってるよ。…よし、それじゃあそろそろトランプでもするか!」
「おっ!いいね!」



あの日の夜は、あっという間に過ぎてしまった。今晩もあの日のように楽しい夜が過ごせるのだろうか。正直観光よりもそっちの方が楽しみだったりする。
揺れるバスの中で杉村の横顔を盗み見ながら、期待に胸を膨らませていると、ふと杉村が読んでいた本から目を離し顔を上げた。
そしてこっちを振り返るもんだから、俺とバッチリ視線がぶつかった。

「…っ!」
杉村は、よく見ないとそれとわからないような微笑を俺に投げると、また本へと目を戻した。俺は赤くなった頬をどうする事も出来ず、しかしどうしようもなく高揚感に包まれた。
また皆で騒いで、馬鹿やって、くだらないけれどそれでいて思い出に残る夜になればいい、そう思ったんだ。


そこから既に、悪夢は始まっていたらしい。









未来の思い出













2011.5.25



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