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とんとんとん、包丁がまな板を叩く音が小気味よくリズミカルに響く。シゲさんが野菜を切る横で、僕は米を磨いで炊飯器のスイッチを押した。

「ん、全部切れたでー」
「じゃあ…僕はサラダ作りますね」
「おう」
シゲさんから受け取った包丁をさっと洗い、冷蔵庫から目に付いたサラダに出来そうな野菜を取り出す。
一通り食べやすい大きさに切って皿に盛り付け、ドレッシングをかけて完成だ。


今日はシゲさんと僕の家で晩御飯を食べる事になり、その準備の真っ最中。メニューはカレーとサラダ。カレーも手際よく作るシゲさんにキュンとしたのは置いといて、僕は食器の準備に取り掛かった。

テーブルセットして調理器具を洗い終える頃には、食欲をそそるカレーのいい臭いが漂い始めた。
「うん、うまい」
シゲさんは小皿にカレーをよそって味見すると、にっと笑った。
そしてもう一度カレーをよそうと、今度は息を吹き掛けて冷ましてから、僕にその小皿を手渡した。
「美味しいです!」
口の中に広がったまろやかな味に自然と笑みが零れる。
「やろ?愛情たっぷりやからな」
茶目っ気たっぷりにウインクを投げて寄越したシゲさんに、僕は頬が熱くなるのを感じた。

「あとやっぱ、間接じゃなくて直接がええな」
「へ?ん、」
間接って何のはなし、と思ってる内にシゲさんの唇が僕の唇に触れて、僕は手にしたままだった小皿を思い浮かべて一人納得したあと、シゲさんが唇を離した。
追い付かない思考のままシゲさんの瞳を見上げると彼があまりにも優しく微笑うので、そこでようやく理解が追いついて、体温がこれでもかと上昇した。
「カレー味や…。色気もなんもないな…」
そう言ってシゲさんが眉を寄せるので、僕は赤い頬のまま確かに、と笑った。


テーブルを挟んで、シゲさんと腰を下ろす。
二人揃って手を合わせていただきますを言うと、シゲさんがふと微笑った。
「?どうしたんですか?」
「いやあ、なんか新婚さんみたいやなと思って」
ああもう、僕はこの人といるとドキドキしっぱなしだ。頬に熱が昇るのは、今日で一体何回目だろう。
「なんやったら、あーんってやつもやってくれてええねんで」
「それは恥ずかしすぎるんでいやですっ」
ふるふると首を横に振ると、そんな事予想済みだったらしいシゲさんは、ははっと笑ってカレーに手を付け始めた。
遅れて僕も食べはじめる。味はさっき食べたから知ってたけど、やっぱり何回食べても美味しい。
食卓には、自然と笑顔が溢れていた。









きっと僕らの未来の日常風景













2011.1.23



あきゅろす。
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