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俺は旦那が照れている所を見たことがない。気がする。

「何、沖田くん。そんなに見つめられると照れるんだけどぉー」
隣にいた旦那の瞳をじっと覗き込んでいると、へらりと笑ってそう言われた。
違うんだ、こういうのじゃない。
こうやって軽いノリで照れると口にすることはあるけれど、旦那は本当に照れているわけじゃない。俺が茶化されているだけ。
いつだって余裕があるのは旦那の方で、俺はポーカーフェイスを気取っているだけで、内心は旦那の一挙一動にとてつもなく振り回されている。
経験値の差ってやつなのだろうか。だとしたら、ちょっと悔しい。そうだとしなくても悔しいけれど。

所詮旦那から見りゃあ俺なんてまだまだ青臭い餓鬼だ。いくら背伸びしたって、これっぽっちも旦那に追い付けやしない。不意打ちで抱き着いてみたり、キスしてみたり、でも旦那は驚きはしても頬を緩めたあと照れたりはしない。
「旦那はどうやったら照れてくれるんですかィ」
一人で悶々と考えていてもどうしようもないので、直接聞いてみる事にした。旦那は少し目を丸めたあと、いつものように緩く微笑んだ。

「沖田くんの前では結構照れてるけどなー。気付いてない?」
それは初耳だ。
「あれのどこが照れてるって言うんでさァ」
記憶を辿ってみても、それらしい表情が一つも思い出せない。
「あー、銀さんポーカーフェイスだから。沖田くんと同じで」
「どういう意味でさァ」
「さぁな」
旦那はまたゆるりと笑った。

つまり、なんだ。
俺が照れているのを顔に出さないように、旦那もポーカーフェイスなだけで内心動揺したりしているってことか?
それにしても、俺は顔に出してないけれど照れているんだろうと旦那には見透かされていたってことか?
なんだ、結局旦那の方が一枚上手って事か。でも何故だろう、さっきまでのもやもやは綺麗に晴れてしまった。一挙一動に浮いたり沈んだりしているのは俺の方ばかりではなかったのだ。

「いつか抜かしてやりますぜ」
「…楽しみにしてるよ」
真っ直ぐ目を見つめて口許を少し緩めれば、旦那も微笑を返した。
その余裕、いつか崩してみせる。内心だけじゃなく照れた顔が見たいから。
でも、今はその微笑みだけで我慢しておこうか。













表裏

















2011.3.4


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