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額から零れる汗は、とどまる事を知らない。少し歩いただけだというのに、Tシャツはとっくにビショビショになっていた。
「あっつー…」
吐き出すように、隣を歩くシゲさんが言った。あまり近くに寄ると暑さが増すように感じるためか、僕らの距離はいつもより心なしか離れていた。

「あ、ちょっと涼んでいこうや」
シゲさんが指差したのはコンビニだった。言うが早いか、彼の足は真っ直ぐコンビニに向かって進み出した。ダラダラとしていた足取りも、急にしっかりとしている。僕も苦笑いしながら彼の後を追った。


「いらっしゃいませー」
自動ドアが開き、一歩店内に足を踏み入れると、全身が冷気に覆われた。思わず目を細めてほわっと息を吐いた。
「生き返るー」
シゲさんも隣で涼しい空気を全身で感じていた。
適当に店内を物色しているうちに、だくだくと流れていた汗もいつの間にか引いていた。なんなら服に染み込んだ汗が冷やされて少し寒いくらいになってきたので、外に出ようと目でシゲさんの姿を探した。
鮮やかな金髪は、すぐに目に入った。
「シゲさん」
声をかけると彼は僕が言おうとしていた事がわかっていたらしく、頷いてドアを指差した。
「ん、そろそろ出よか」
「はい」

外に出た瞬間、再びあのむわっとした熱気に襲われた。せっかく冷えた体もすぐに熱され、纏わり付くような暑さに早くも汗が零れ出た。
「はい」
「へ?」
あまりに不意に、あまりに自然に差し出されたそれを、僕は反射的に受け取ってしまった。ひんやりした感触に何だろうと手の中を見ると、それはアイスクリームだった。
そういえばいつの間に会計したのか、彼は手にコンビニ袋をぶら下げていた。
「あの、」
「あ、ソーダで良かった?」
「え、はい」
シゲさんもアイスを取り出し、ピリピリと袋を開け口に含んだ。
「はよ食べな溶けるでー」
タイミングを外されてぼけっとしていた僕を、シゲさんがちらりと横目で見た。
「うわ、は、はい」
言われるがままに封を切り、口の中に突っ込んだ。冷たい塊が喉を通り胃の中に落ちて行く。

「あの、ありがとうございます」
「ん、どういたしまして」
僕は戸惑いながら言ったのにシゲさんは何食わぬ様子で、アイスをかじったまま笑った。
そしてアイスを左手に持ち替えると、空いた右手で何も持っていなかった僕の左手を捕まえた。

さっきよりも強くなった日差しの下、僕らの距離はさっきよりも縮まっていた。











夏色ソーダ味













2010.6.16



あきゅろす。
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