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「旦那ァ、雪降ってきやしたよ」
「そーだな」
ちらちらと降ってきた雪を眺めながら沖田が言うが、銀時は見向きもせずに気のない返事を返した。こたつ布団に包まって、顔を上げる様子もない。

「…みかん、いりますかィ」
「いる」
そんな銀時の様子を見て試しに小声で言ってみると、反応速度は素晴らしいものだった。先程までだれていたとは思えない程勢いよく体を起こし、催促するように両手を差し出した。
やっぱりこたつにはみかんは最強だよなぁ、一人頷く銀時に呆れながらも、よく熟れたみかんを一つ手に乗せてやる。無表情ながらも銀時の瞳が輝いているように見えるのは気のせいだろうか。

一心不乱にみかんを口へ運ぶ銀時を可愛く思いながら、沖田も籠の中のみかんへと手を伸ばす。
皮を剥き終わり、さぁ食べようかという所で隣から熱視線を感じ手を止めた。見ればもう食べ終えてしまったらしい銀時が、食い入るように沖田の手の中のみかんを見つめていた。
沖田はみかんと銀時を見比べしばし制止し、
「あーっ!」
銀時の叫び声を無視してみかんを口に放り込んだ。甘酸っぱい果汁が口の中に溢れる。
沖田が咀嚼する姿を横目で見ながら、銀時は不満そうに唇を尖らせた。

「そんな顔しても、可愛いだけですぜ」
「可愛くねぇよ」
眉は寄せたまま、今度は口をへの字に曲げた。頬を膨らますというオプションも付いている。
それも可愛いだけでィ、という言葉は飲み込んでおいた。
「旦那、」
呼べばふて腐れた表情ながらこちらに向き直ってくれる銀時に笑みが漏れそうになるが、ポーカーフェイスでやり過ごす。そして、僅かに開いた唇の隙間にみかんを一房差し込んでやった。
銀時は目をしばたたかせた後、みかんの味を確認して破顔した。全くもって単純だ、まあそこも可愛いのだけれど。餌付けしてる気分だ、と思いながら沖田もそっと微笑った。










冬の王道








第5期拍手御礼文
2009.12.19〜2010.5.15


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