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少し暖かくなったと思えば、翌日にはあっという間に冬の寒さに逆戻り。まだまだ厳しい寒さの中の部活を終え、帰宅しようとした所でつんつんと肩を突かれた。振り返って見るとニッと笑うシゲさんと目が合った。
「なぁ、カザって料理出来るよな?」
「まあ…一応」
たいした物は作った事はないけれど、毎日のご飯は作っている。

「じゃあバレンタイン、よろしくな!期待してるで」
そう言って、彼は颯爽と去って行った。ひらひらと振られた手を見送りかけて、漸く彼の言葉を飲み込んだ。
「え、えええ、僕お菓子なんて作った事ないですよ…!ちょ、シゲさーん!」
慌てる僕の叫びもどこ吹く風で、シゲさんは足を止めてはくれなかった。
もしかして、これは何か作るしかないのだろうか…。


こういう時は何故か時間が経つのは早いもので、あっという間にバレンタイン当日になってしまった。市販のチョコを溶かして固めるだけ、というのは何だか味気ない気がしたので、レシピを簡単に入手出来たチョコクッキーを作ってみた。
難易度もそれほど高くなく、ちゃんとレシピ通りに作ったし味見もしたし功兄も美味しいって言ってくれたから、大丈夫。なはず。それにしても、鞄の中にクッキーが入っているというだけで妙に落ち着かない。

「カザ、おはよう」
「シ、ゲさん。…おはようございます」
軽く肩を叩かれただけなのに、ドキリと心臓が跳ねた。そんな僕の様子を見て、シゲさんは笑いながら頭を撫でた。
「そんな緊張せんでも。けど、その様子やと作ってきてくれたんやんな」
顔にいやというほど熱が集まっているのがわかる。緊張するな、なんて無理な話だ。
ぎこちなく頷いて、覚束ない手つきで鞄から軽くラッピングしたクッキーを取り出す。どぎまぎしながら差し出すと、シゲさんは嬉しそうに笑って受け取ってくれた。
「ありがとう」
くしゃり、また頭を撫でられた。視線を彼に投げると彼は優しく微笑んで、掬い上げた僕の髪にそっと口づけた。
一層体温が上昇した気がする。耳まで熱い。

「ん、旨い」
「ほんとですか!良かった…」
ゆっくりと歩きながらシゲさんは袋の口を縛っていたリボンを解き、クッキーを一枚口に運んだ。ドキドキしながら見守っていると、彼は金の髪を揺らして微笑んだ。
上手く作れたつもりではいたけれど、喜んでもらえてホッとした。それに何より、自分が作った物で彼が笑顔になってくれた事が嬉しい。
かなり緊張したけれど、作って良かったな。

僕も自然と笑みが零れた。











愛情たっぷり詰め込みました













2010.2.14



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