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あのキラキラと輝く澄んだ瞳を思い出しただけで、ドキドキと胸が高鳴った。日に透ける金色の髪も、すべすべの頬も、柔らかい唇も、彼を形作る物全てが愛おしい。

「よぉ、ツナ」
ツナ、
聞き慣れた筈の俺の呼び名も、彼の甘い声で紡がれるとまるで別の物のようだ。
「ディーノさん、いらっしゃい」
笑顔で出迎えると、彼も同じように笑顔を返してくれた。彼が笑うと、上品な香水の香りと共に太陽のように眩しい光がキラキラと溢れ出す。

「じゃあ俺らは帰るぜ、ボス」
「ああ、ご苦労だったな」
後ろに控えていた彼の部下達が、背を向けて立ち去って行った。
それを見送りながら一抹の不安を覚えたが、まあ彼と二人きりになれるんだし、と自分に言い聞かせる。
しかし、彼を家に上げようとすると、玄関の小さな段差で早速転んだ。予想通りの展開に苦笑いしつつ、手を差し出して彼を助け起こした。

「お茶、どうぞ」
「サンキュー」
彼の細長い指が湯呑みを掴むのを用心深く横目で見ながら、俺はソワソワと落ち着かない。
今日は彼の誕生日、勿論プレゼントは用意したのだが、中学生の小遣いで買える物なんて限られている。しかも彼は大きなマフィアのファミリーのボスで、お金だって当然沢山持っているだろう。
彼は俺が誕生日祝いをしたいと電話をしたら、嬉しそうに返事をして今日に合わせて日本に来てくれた。彼なら何をプレゼントしても喜んで受け取ってくれるだろうが、やはり彼が本当に嬉しいと思ってくれる物を贈りたいものだ。

「ディーノさん」
彼が湯呑みを机に置いたのを見計らって声をかけると、彼は髪と同じ金色の長い睫毛に縁取られた瞳をこちらに向けた。
「誕生日おめでとうございます。これ…、気に入ってもらえるかわからないですけど…」
何日も前から用意していたプレゼントをどぎまぎしながら取り出す。おずおずと差し出すと、ディーノさんはパッと瞳を輝かせながら受け取ってくれた。
「ありがとう!開けていいか?」
俺が頷くと彼は袋の口を縛っていたリボンをシュルリと解き、中を覗き込んだ。
「花…?」
「リューココリネって言うそうです。2月4日の誕生花なんですよ。花言葉は、温かい心だそうです」
もっとも、全て花屋さんから聞いた知識でしかないが。誕生花ってどの日も幾つかあるようだが、この花言葉が彼に1番合っていると思った。彼は俺にしたら太陽のようで、いつも温かく包み込んでくれるから。

「ありがとう」
光の粒が溢れ出すような笑顔。そんなもの向けられて、ドキドキしないわけがない。
でも、喜んでもらえたんだと、どこかホッとした。気付けば彼の腕が背中に回っていて、ぎゅううっと抱きしめられていた。
「ディーノさん」
もう心臓はドキドキを通り越してバクバクしている。甘く優しい香水の匂いに酔ってしまいそうだ。
そっと彼の手が俺の頬を包み込むように添えられる。そっと目を閉じると、優しく口づけられた。
目を開くとそこにはやはり、優しい笑顔の彼がいた。










あたたかい人














2010.2.5


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